「私には核兵器なき世界実現を訴えていく義務がある」(秋葉忠利広島市長インタビュー)

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【国連IPS=アンナ・シェン】

国連で世界の市長が核問題について果たせる役割について演説した秋葉忠利広島市長は、核廃絶の早期実現を一貫して訴え続けている人物である。

秋葉氏は今年で原爆投下から65年を迎える広島市の市長とつとめるとともに、世界で4000近い市が加盟している世界平和市長会議(Mayors for Peace)の会長をつとめている。秋葉氏はアンナ・シェンIPS特派員の取材に応え、広島市の復興、核廃絶への想い、そして今月国連で開催中の核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議について語った。

IPS:今では広島市は完全に現代的な街として再建されています。広島市は原爆投下後、どのような復興の道を歩んだのでしょうか?

秋葉:日本降伏後に来日した進駐米軍の一部に実に素晴らしい都市計画の専門家たちがいました。お陰で、広島市の復興計画は当時最新の都市計画のノウハウを反映したものとなったのです。例えば、平和記念公園の設計に丹下健三氏を起用したのもその表れでした。

また一方で、歴史的な要因もあります。原爆による破壊はあまりにも凄まじく、しかし人々の生活はその中で続けていかなければならなかったことから、当時は、夥しい犠牲者に対する適切な埋葬や葬儀を行う余裕がありませんでした。その結果、いわば、人々は広島の街中に横たわる死骸の上を歩いているような状態だったわけです。こうした実情から、戦後の都市計画を進めるにあたっては犠牲者に対する繊細な配慮がなされることになったのです。

例えば、原爆投下前にあったある花屋の周りでは、多くの人々が犠牲となりました。そしてそこには記念碑が出来ています。こうした数千におよぶ記念碑が広島の街全体に建立されました。広島市民にとって美しい街を再建することは、犠牲者を慰霊する神聖な空間を作り上げることでもあるのです。

IPS:広島、長崎の原爆投下を経験した被爆者についてお話しください。

秋葉:被爆者は様々な身体的・精神的苦痛を背負って生きているのです。従って、自らの被爆の経験を世間に語ることは、同時にその苦痛を呼び起こすことでもあります。多くの戦争や惨劇の犠牲者がそうであるように、自らの経験について固く口を閉ざす被爆者も少なくないのが実情です。そうした中で、被爆の後遺症等に苦しみながらも、幸い高齢になるまで生き延びて、自らの被爆経験を語ることができた人々も多くいます。

例えば60歳の還暦を迎えるまで自身の被爆体験を語ったことがなかった田辺さんという被爆者がおられます。彼は原爆で両親を失い、叔父夫婦のもとで育てられました。当時、育ての親に心配をかけたくないと、自身の被爆経験について一切話さなかったとのことです。田辺さんはどのようにして、長い年月に亘ってこうして耐え続け、しかも復讐や悔恨の念を抱かないでおられるのでしょうか。この田辺さんが唯一望んだことは、爆心地(旧中島地区=現・平和記念公園)に嘗て住んでいた人々の記憶から当時の人々の営みや佇まいを映像で再現し、見てもらうことだったのです。原爆によって永遠に失われたあの街に生きていた人々のストーリーを見てもらうことで、失われたものの尊さと、このような悲劇が二度と繰り返されてはならないというメッセージを伝えたかったのです。

IPS:市長としての役割についてどのようにお考えですか?

秋葉:私たち市長は、どこにいても民衆の声を代弁する存在でなければなりません。そうして初めて政府も民衆の声に耳を傾けるのです。同様に、私たち世界平和市長会議のメンバーが国連に来て演説をするのは、国連に集う各国代表に、(広島の被爆体験を含む)世界の都市の民衆の経験を理解してもらうためなのです。

その点を証明する出来事がありました。約2週間前、マルコム・フレーザ(インターアクション・カウンシル名誉議長)元オーストラリア首相をはじめ、世界各国の大統領、首相経験者らによる「インターアクション・カウンシル」(OBサミット)の第28回年次総会が広島で開催されました。

広島平和記念資料館の視察や被爆者との対話を経て、参加者たちには核兵器のもたらす苦しみがどのようなものかということを、より深く理解していただけたと思います。そしてそこで得た危機感が、「世界の全ての政治指導者は広島と長崎を訪れるべき」というコミュニケに繋がったと思います。参加者の方々は、一般の人々ではなく、思いやりがあり博愛主義を信奉する大きな影響力を有する元国家指導者の方々ですが、今回広島を訪問して本当に心を動かされたようでした。

広島市は今年の8月6日、原爆投下65周年を迎えますが、私は全ての核保有国の指導者を是非この機会に広島に招待したいと考えています。

広島市長としての私の役割は、被爆者の方々の声を代弁して「核兵器のない世界」を実現させることだと考えています。被爆者の方々は、原爆で命を落とした方々に天国で再会した時、「あなたたちの死は無駄ではなったかですよ。私は『核兵器のない世界』をこの目で見てきたのですから。」と語れるようになるために、彼らが存命のうちに、是非とも核廃絶の実現を目の当たりにしたいと切望しているのです。私は市長として被爆者の方々のこうした望みを実現する義務があると感じています。

今回のNPT運用検討会議の結論には、どのようなものを期待されていますか?

秋葉:今回の会議は、世界の民衆の意見を動員し、それを全人類の福祉のために活用する素晴らしい機会です。開会式でのいくつかの演説内容は、平和市長会議がその実現に向けてこれまで努力を傾けてきた目標の多くに言及するものでした。(05.05. 2010.)

IPS Japan

 

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