NPT運用検討会議でイスラエルとイランが議論の焦点に

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【国連IPS=タリフ・ディーン】

5月3日、約1カ月に亘って開催されるNPT運用検討会議が開幕したが、予想通り議論はイスラエルに集中した。

イスラエルは中東地域で唯一核武装した国であるが、政治的に特別な地位(=Sacred Cow)を享受しており、その武器開発計画が米国及び西欧諸国から公式に非難されたことはない。

しかし会議初日、国連加盟国の圧倒的多数にあたる192カ国中118カ国が、イスラエルは自国の核兵器開発計画について公表し、核不拡散を目的とするNPTに加盟するよう求めた。

118カ国が加盟する非同盟運動(NAM)を代表してインドネシアのマルティ・ナタレガワ外相は、「イスラエルがNPTへの署名、批准を拒否してきたために、中東の国々(=非核保有国)がこの大量破壊兵器を有する唯一の国(=イスラエル)による核の脅威に晒されてきました。」と語った。

「イスラエルは『(IAEAの管理下にない)未知の安全基準に基づく未保護の核施設を運営』していることから、それに伴う様々なリスクを国際社会に広げてきました。さらに悪いことに、イスラエルは、暗黙のうちに、『中東及び国際的な広がりを孕んだ』破滅的な核軍拡競争の引き起こす脅威の引き金となってきました。その結果、NPT体制そのものが危機的な状況に陥っているのです。」と、ナタレガワ外相は、国連最大の政治的組織の見解を代弁して警告した。

またナタレガワ外相は、「現在の状況を看過するわけにはいきません。なぜならこのままでは、『中東大量破壊兵器フリーゾーン』創設を求めた1995年のNPT運用検討会議決議の実現が危うくなってしまうからです。」と語った。

5月28日まで約1カ月に亘って開催される会議では、核拡散の防止と世界の兵器廠からの核兵器廃絶を究極の目的とするNPT体制の現状について、成功・失敗の両側面が検証されることとなっている。

NPTは1968年7月に署名公開され、5年ごとに運用検討会議が開催されてきた。

現在、NPT体制の下で核保有が認められている5カ国(米国、英国、フランス、中国、ロシア:これらの国々は国連常任理事でもある)を含む189カ国がNPTに加盟している。

一方、NPT非加盟の核兵器保有国はインド、パキスタン、イスラエルである。北朝鮮は、NPTに加盟していたが、規定違反を犯した後に脱退している。

2000年のNPT運用検討会議では、イスラエルがNPTに加盟し全ての核関連施設を国際原子力機関(IAEA)の統合保障措置の下に置く必要性が確認された。

しかしイスラエルは今日に至るまでこの提案を拒否している。

従来より軍縮と核不拡散を「最優先課題」と宣言してきた潘基文国連事務総長は、開会式の演説の中で、イランと北朝鮮について名指しで言及した。

潘事務総長は、イランに対して「国連安保理決議を完全順守しIAEAに協力する」よう強く促すとともに、北朝鮮に対しては、「朝鮮半島の検証可能な非核化」実現に協力するよう求めた。

しかし潘事務総長は、イスラエル、インド、パキスタンについて言及するには至らなかった。

もっとも、潘事務総長は、当該3カ国の国名を言及することは避けたものの、「現在NPT体制外にある国々が一刻も早くNPTに加盟することを強く促します。」と語った。

一方、会議に元首クラスとしては唯一の出席となったイランのマフムード・アフマディネジャド大統領は、「核兵器の唯一の機能は生き物全てを殲滅し環境を破壊するものです。」と語り、核兵器に対する道徳的な立場から演説を行った。

「核兵器に伴う放射能は、未来の世代へも悪影響を及ぼし、惨禍は数世紀にもわたって継続するのです。」

「核爆弾は防衛のための武器ではなく、むしろ人間性に対する攻撃です。従って核兵器の所有は、誇りにすべきようなことではありません。むしろ最低かつ恥ずべき行為なのです。」とアフマディネジャド大統領は語った。イランは現在、核兵器を開発しようとしているとして非難に晒されているが、アフマディネジャド大統領は嫌疑をきっぱりと否定している。

「核兵器の使用や、平和的核施設への攻撃をほのめかして他国を脅迫するのはさらに恥ずべきことです。それは、歴史上のいかなる犯罪とも比べられない最悪の行為です。」と同大統領は指摘した。

またアフマディネジャド大統領は、「イスラエルは中東で多くの戦争を仕掛け、今も地域の国々や人々を恐怖と侵略で脅迫し続けている。また、数百基もの核弾頭を蓄積している。」として、イスラエルを非難した。

さらに同大統領は、「イスラエルは米国及びその同盟諸国より無条件の支持を享受しており、核兵器開発計画への必要な支援さえ受けている。」と指摘した。

また同大統領は、IAEAについて、「核軍縮と核不拡散の双方で失敗した」と非難した。

これに対して、米国のヒラリー・クリントン国務長官は、「イランはあらゆる手段で自らの(核兵器開発の)行いから国際社会の注意を逸らし、説明責任を回避しようとしている」と非難した。

「イランは国連安保理とIAEAを公然と無視し、核不拡散体制の未来を危うくしました。」とクリントン長官は語った。

一方、オバマ大統領は4月に開催した核安全保障サミットにおいて、イスラエルの核兵器開発計画についての見解を記者団に求められている。

しかしオバマ大統領は、その質問を巧みかわすとともに、あえて記者団に対して、「イスラエルに関しては、同国の(核兵器)計画についてコメントするつもりはない。」と語った。

「私が指摘しておきたいのは、米国は一貫して、全ての国に対してNPTに加盟するよう強く促してきた事実です。従って何ら矛盾することはないのです。」「イスラエルであろうとその他の国であろうと、私たちは、NPTへの加盟が重要だと考えています。」「ところで、これは新しい方針ではなく、私の政権誕生以前から米国政府が一貫して主張してきた立場です。」とオバマ大統領は付け加えた。(05.03.2010)

IPS Japan

 

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