「核兵器のない未来」を担う市民運動

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【国連IPSタリフ・ディーン】

前国連事務次長のアンワルル・カリム・チョウドリ氏は、 核兵器廃絶を目指して運動を展開している反核活動家に対して、次のようなアドバイスを述べた。「 政府を当てにしてはいけません。また国連もしかりです。」

チョウドリ大使(元駐国連バングラデシュ大使)の国連に対する懐疑論は、 拒否権を有する国連安保理常任理事国であると同時に現NPT体制 下で核兵器保有が認められている5大国-米国、英国、フランス、中国、ロシア-を暗に示唆したものだ。

国連を舞台に約1ヶ月に亘って開幕中の核兵器不拡散条約(
NPT) 運用検討会議のサイドイベントとして開催されたセミナーに出席したチョウドリ大使は、会場の市民社会組織関係者に対して、 かつて90年代に大きな成功を収めた対人地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)について言及し、 それに負けない取り組みをするよう強く訴えた。

「市民社会は(対人地雷禁止運動の際と同様に) 核廃絶を目指した今日の取り組みを通じて、民衆の意識に大きな変革をもたらすことができると確信しています 。」と、チョウドリ大使は、先週開催されたセミナーに参加した、日本に本拠をもつ創価学会インタナショナルの青年メンバーを含む 市民団体関係者を前に語りかけた。

2020年までに核廃絶を目指すグローバルキャンペーンを積極的 に支援する青年運動を率いてきた白土健治創価学会青年平和会議議長は、IPSの取材に応え、「 創価学会青年部が6カ国の青年を対象に実施した意識調査の結果は、ほとんどの民衆が『核兵器が廃絶された方が安心できる』 と考えているというものでした。」と語った。
 
この意識調査は、日本、韓国、フィリピン、ニュージーランド、 米国、英国の6カ国における10代から30代の青年層を対象に、核兵器とその廃絶についての意識調査を行ったもので、4,362人が回答した。

調査結果によると、67.3%が、「 いかなる状況においても核兵器の使用は受け入れられない」と回答した。一方、17.5%が、「核兵器の配備を、 国の存続が脅かされている状況下において最後の手段として認める」、6.1%が、「国際テロや大量虐殺を防止するためならば認める」と回答した。

創価学会青年部のメンバーは、2010年1月から3月にかけて、 核兵器の開発、実験、製造、備蓄、移譲、使用及び威嚇としての使用を禁止する国際条約を採択するよう求め る署名を、日本だけで230万人分近くを集めた。

白土氏は、現在開催中のNPT運用検討会議における日本政府の役 割を問う記者の質問に対して、「日本は国として、自らの被爆経験を普遍的なものとし、核兵器による悲劇を二度と繰り返さないことを人類共通の公約へと 導く特別な責任があります。」と語った。

「日本政府はこの責任を十分自覚し、 それに基づいた行動を展開していくべきです。日本は明らかに、NPT運用検討会議において、 核廃絶への道を開くために重要かつ時代を先取りした役割を果たすことができます。」と、白土氏は語った。

その具体的な方策の一つは、潘基文国連事務総長が2008年に発表した「 核軍縮に向けた5つの提案」の中で支持しているように、日本政府が、核兵器禁止条約(NWC) への支持を鮮明に打ち出すことである。
 
5月28日に閉幕予定のNPT運用検討会議には、 各国政府代表団の他にも、市民社会組織121団体から1500人以上が参加している。

地雷禁止国際キャンペーン(ICBL) が1992年10月に正式に発足した当時、世界各国の政府・軍関係者はこれを「ユートピア(空想的な理想主義を追うもの)」とみなして顧みなかった。 しかしその後キャンペーンに対する世界の民衆の支持が圧倒的な広がりを見せたため、発足から5年を待たずして国際社会は対人地雷禁止条約の交渉を開 始した経緯がある。

「対人地雷禁止条約を実現させたプロセスは、従来の外交に新たな側面を付け加えるとともに、 その適用範囲を広げられるという希望をもたらしたのです。」と、
ICBLの創立者の一人であるジョディー・ ウィリアムズ氏は語った。

ICBLが1997年のノーベル平和賞を受賞した際、 ノーベル平和委員会は、対人地雷禁止条約の成果はもとより、全面禁止を求める市民運動が政府とともに条約を実現させたこの新 しいモデル形態を評価したのです。」とウィリアムズ氏は語った。

チョウドリ大使は、「核兵器の廃絶は、世界のNGO並びに市民社 会による核兵器の全面禁止を求める運動があってはじめて実現が可能なものだと強く確信しています。従って、世界の民衆は、自ら声を上げ、 それぞれの国の政府に核廃絶を支持するよう圧力を加えることで、政府間協議のみでは実現を期待できない成果を成し遂げることが可 能なのです。」と語った。

またチョウドリ大使は、「国連が提唱しているように『 平和の文化』を構築していくことで、平和で安全な世界を実現するための持続可能な基盤を創出することが必要です。」と指摘した。

日本には、核兵器による大量殺戮を経験した世界で唯一の国として、 核廃絶を目指す運動を率いていく真の「道義的な権威」が備わっている。

「私は国連で開催中のNPT運用検討会議で、 被爆者の方々をはじめ、世界の数百万人の人々を鼓舞してきた多くの日本の市民社会や、(SGIの)池田大作会長のような精神的指導者たちが、 核廃絶を熱心に訴えたことに勇気づけられました。」と、チョウドリ大使は語った。

「もちろん日本政府は、 かつてカナダ政府が市民社会と手を携えて対人地雷禁止を支持したように、核廃絶をもっと断定的に支持して地球規模の核廃絶運動の先頭に立 つ姿勢を打ち出す必要があります。」と、チョウドリ大使は付け加えた。

従来から日本で大規模な反核運動を展開し、2007年には新たに「 核兵器廃絶のための世界の民衆の行動の10年」を開始した創価学会インタナショナル(SGI)は、 192カ国に1200万人の会員を擁する仏教を基調とした非政府組織である。

青年による反核運動がもつ影響力について問う記者の質問に、 白土氏は、「核廃絶への取り組みが再び頓挫したり、問題の先送りがなされた場合でも、私たち若者はその結果とともに生きていかなければならないのです 。」と指摘し、だからこそ「若い人々は核廃絶の問題について、特別な責任があるのです。」と語った。

「歴史を振り返れば変革を引き起こした原動力となったのはいつも若 者たちでした。私たちは同世代の若者や友人に、核廃絶に関する自身の責任はもとより、世界を変革していける自らに備わった有望な可能性についても気づ いてほしいと思っています。」(05.23.2010

IPS Japan
 

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