Rorry Daniels, Managing Director, Asia Society Policy Institute, giving a presentation at a session titled "Controlling Nuclear Weapons". (from left to right): Nobuyasu Abe, Former Director, Center for the Promotion of Disarmament and Non-Proliferation; Rorry Daniels; Jonathan Granoff, President, Global Security Institute; Audrey Kitagawa, President, IAMC; and Nikolas Emmanual, Professor, Soka University (Chair). Anna Ikeda, SGI Representative to the UN and Mitsuru Kurosawa, Professor Emeritus Osaka University, participated in the session online. Photo: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.
Rorry Daniels, Managing Director, Asia Society Policy Institute, giving a presentation at a session titled "Controlling Nuclear Weapons". (from left to right): Nobuyasu Abe, Former Director, Center for the Promotion of Disarmament and Non-Proliferation; Rorry Daniels; Jonathan Granoff, President, Global Security Institute; Audrey Kitagawa, President, IAMC; and Nikolas Emmanual, Professor, Soka University (Chair). Anna Ikeda, SGI Representative to the UN and Mitsuru Kurosawa, Professor Emeritus Osaka University, participated in the session online. Photo: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

G7広島サミットで、核軍縮の原則を推進するよう求められる日本

【シドニー/東京IDN=カリンガ・セネビラトネ】

日本が主催する5月のG7サミットに向けて3月29日に創価大学(東京八王子市)で開催した政策提言国際会議(同時ライブ中継)で、G7広島サミット事務局の有吉孝史副事務局長が、「岸田文雄首相がサミットの議題に核軍縮を入れることを重要視していた。」と語った。

有吉副事務局長は、岸田総理の故郷である広島は、第二次世界大戦末期(1945年8月6日)に米国が原爆を投下し約14万人が亡くなった場所であり、核兵器が人類にもたらす未曾有の課題を象徴している都市としてサミット開催地に選ばれたと語った。

G7広島サミットでは議論を深め、厳しさを増す安全保障環境のなかで核兵器のない世界を実現するという考えに対して強いメッセージを送ることになるだろう。この問題に対処する方法はいくらでもあります。」と語った。

有吉副事務局長はG7で焦点が当てられる可能性がある3つの論点を挙げた。第一は核兵器の不使用に対する「共通認識」を持つこと。第二は核兵器政策における透明性の向上。そして第三は核兵器備蓄の削減と原子力平和利用の促進である。

会議の共催団体である「G7研究グループ」のジョン・カートン代表は、「世界がとりわけロシアによって核兵器使用の危機に晒されている今年、広島でG7サミットが開催されることは意義深い。広島はG7の指導者らに核戦争の恐ろしさを想起させる重要な場所です。私たちは自らの行いを見つめ直し、(軍縮政策がもたらす)すべての人々の利益に向けて努力していく必要があります。」と語った。

G7とは、フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ(議長国順)の7か国及び欧州連合(EU)が参加する枠組である。

核兵器の管理に関するパネルディスカッションで発言した創価学会インタナショナル(SGI)国連事務所のアナ・イケダ氏は、「広島G7サミットは私たちの安全について真剣に考える機会となるだろう。」と指摘したうえで、「核兵器は国家の安全保障を達成するための手段にはなりえません。」「私たちは、核兵器に依存する安全保障政策からの脱却を図らなければなりません。」と語った。SGIもこの会議の共催団体である。

Participants of a one-day international conference titled ‘Advancing Security and Sustainability at the G7 Hiroshima Summit’ held at Soka University on 29 March 2023. Photo: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

イケダ氏は、すべての核保有国が「先制不使用」の原則を採用すれば、ウクライナ紛争を解決するための多国間対話の余地が生まれると主張した。そして、「そのような政策には、相互信頼を築くための政策が伴わなければなりません。」と付け加えた。

多文化共生のための国際アカデミー(IAMC)のオードリー・キタガワ会長は、「G7各国の現状は核不拡散条約(NPT)に違反している部分があります。」と指摘したうえで、「G7広島サミットでは核問題を議題の最高レベルに引き上げ、核兵器廃絶への関心を高める必要があります。そうでなければ核保有国が増える可能性があります。」と警告した。

「もしイランが核を保有すれば保有国数は10カ国になり、サウジアラビアもこれに続くことになるかもしれません。また韓国も、これに続くか、米国に核配備を要請することになるかもしれない。」と指摘し、「中国と米国は核兵器予算を増やしています。こうして核保有国は今日私たちが目のあたりにしている不安を大きくすることに寄与してしまっているのです。」とキタガワ会長は語った。

NPTは核兵器と兵器技術の拡散を予防することを目的とした画期的な国際条約である。5つの核兵器国を含む191カ国が署名している。

「核クラブのメンバーは安全保障にとって最大の障害となっています。核兵器の先制不使用は、(緊張を緩和するための)第一歩であり、それを公約にしているのは中国とインドだけです。」とキタガワ会長は語った。

アジア・ソサエティ政策研究所マネージングディレクターのローリー・ダニエルズ代表は、「中国の勃興に対する米国の反応は、アジアにおける緊張と軍拡競争を加速させています。この傾向を反転させるには、 『協力』の定義を見直して『共通の利益のために協力する』ものだと考える必要があります。」と指摘した上で、「中国と米国はかつて、がん治療のための原子力研究や濃縮ウランの危険性低減のために協力していたことがあります。」と語った。

グローバル安全保障研究所」のジョナサン・グラノフ所長は、「人類のあらゆる努力に終止符を打ってしまうような装置を私たちは作り出しています。」と語った。また、私たちは「『良き』国が(人類に対して)恐ろしいことをする事例を知っています。」と指摘し、イラクや広島、シリア、スーダン、ウクライナの例を挙げた。また、リビアやウクライナ、イラクのような核兵器を放棄した一部の国々がどうなったかについても注意を喚起した。

「私たちは天然痘ウィルスを生物兵器として使用することをどの国に対しても許していませんが、9カ国にのみウィルスの使用を認めたとしたらとんでもないことです。しかしこれと同様のことが核兵器には起きているのです。」とグラノフ所長は主張し、広島G7サミットが、核兵器の先行不使用を、おそらくは国連安保理を通じて採択される法的拘束力のある国際条約にする第一歩を踏み出すよう訴えた。

「米国では、私たち活動家が核軍縮を求めると、『同盟国がそれを望んでいない』と言われます。G7広島サミットでは、核兵器は安全保障のためには必要なく廃絶すべきだというメッセージが(あらゆる人々に対して)発信されるべきです。」とグラノフ所長は説明した。

イケダ氏は、「核兵器が私たちを滅ぼしてしまう前にそれを廃絶するには、核兵器が私たちの安全を守るとの観念を打ち捨てねばなりません。そのためには、核兵器を正当化する発想に対抗するとともに、核兵器を避けることが(平和への)道だと言い続ける必要があります。広島(G7サミット)はそこに向けた期限と道筋を明示すべきです。」と語った。(04.03.2023) INPS Japan/ IDN-InDepthNews