Photo: SGI President Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun
Photo: SGI President Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun

平和構築をめざす仏教者が「核軍縮は早期に解決を図らなければならない課題」と訴え

【ベルリン/東京IDN=ラメシュ・ジャウラ】

地域社会に根差した仏教団体である創価学会インタナショナル(SGI)は、国際連合のように、とりわけ世界が人類の生存を脅かす複合的な危機に見舞われる中で、希望の光となっている。

仏教哲学者、教育者として世界の平和構築を一貫して訴え続けてきた池田大作SGI会長は、1983年から毎年、平和提言を発表している。40回目となる今回の提言は「人類史の転換へ 平和と尊厳の大光」と題され、1月26日に発表された。

池田会長は「現在の世代だけでなく、これから生まれる世代のために、何としても早期に解決を図らねばならない3つの課題」として、①気候変動問題の解決、②子どもたちの教育機会の確保とその拡充の取り組み、③核兵器の廃絶について、具体的な提案を行っている。

世界192カ国・地域にメンバーを擁しているSGIは、国連経済社会理事会との協議資格を持つNGOである。

池田会長は、「コロナ危機が続く中で、世界の軍事費は増大しており、核兵器についても13,000発以上が残存する中、その近代化は一向に止まらず、核戦力の増強が進む恐れがあると懸念されています。」と指摘している。

さらに池田会長は「またコロナ危機は、核兵器を巡る新たなリスクを顕在化させました。核保有国の首脳が相次いで新型コロナに感染し、一時的に執務を離れざるを得なかったほか、原子力空母や誘導ミサイル駆逐艦で集団感染が起こるなど、指揮系統に影響を及ぼしかねない事態が生じたからです。」と述べている。

池田会長は、「核兵器による惨劇は起きないといった過信を抱き続けることは禁物である。」と警告したうえで、「広島と長崎への原爆投下以降、核兵器が使用されずに済んできたのは、それぞれの時代で最悪の事態を防いできた人々の存在と何らかの僥倖があったからでした。」と述べている。

池田会長はさらに、「国際環境が流動化し、ガードレールは腐食しているか、もしくは全く存在していないという現在の世界において、人的な歯止めや僥倖だけに頼ることは、もはや困難になってきている。」述べている。

現在、核軍縮に関する2国間の枠組みは、2021年2月に米ロ両国が延長に合意した新戦略兵器削減条約(新START)だけしか残っていない。

5年毎に開催される核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議は、新型コロナのパンデミックの影響で今年1月に開催が予定されていたが、再び延期され、8月に開催することが検討されている。池田会長は、「2015年に開催された前回の会議では最終文書が採択されずに閉幕したが、その轍を踏むことがあってはならない。」と述べている。

そのうえで、「全ての加盟国が、NPTの前文に記された『核戦争の危険を回避するためにあらゆる努力を払う』との誓いに合致する具体的な措置に合意するよう強く望みたい。」としている。

NPTはしばしばその中核的取引、すなわち、非核兵器国が核兵器取得を放棄する代わりに、核保有国が平和的核技術の利益を共有し、最終的に核兵器を全廃することを目的として核軍縮を推進するという取引を基盤としてきたと見られている。

池田会長は、核保有5カ国の首脳が共同声明で再確認した、「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」との精神は、冷戦時代の1985年11月にジュネーブで行われた、アメリカのロナルド・レーガン大統領(1911~2004)とソ連のミハイル・ゴルバチョフ書記長による首脳会談で打ち出されたものであると指摘し、ジュネーブ首脳会談を彩った「この精神の重要性は、昨年6月の米ロ首脳会談における声明でも言及された。」と述べている。

池田会長は「核時代に終止符を打つために何が必要となるのかについて討議する機会を国連安全保障理事会で設けて、その成果を決議として採択し、時代転換の出発点にすべきだと、私は考える。」と訴えている。

「核兵器の使用を巡るリスクが高まっている現状を打開するには、核依存の安全保障に対する“解毒”を図ることが、何よりも急務となると思えてなりません。」と池田会長は述べている。

「自国の安全保障がいかに重要であったとしても、対立する他国や自国に壊滅的な被害をもたらすだけにとどまらず、すべての人類の生存基盤に対して、取り返しのつかない惨劇を引き起こす核兵器に依存し続ける意味は、一体、どこにあるというのか。」と池田会長は問いかけている。

「この問題意識に立って、他国の動きに向けていた眼差しを、自国にも向け直すという“解毒”の作業に着手することが、NPTの前文に記された『核戦争の危険を回避するためにあらゆる努力を払う』との共通の誓いを果たす道ではないかと訴えたいのです。」

来年には、日本でG7サミット(カナダ・フランス・ドイツ・イタリア・日本・英国・米国)が開催される。その時期に合わせる形で、他の国々の首脳の参加も得ながら、広島で「核兵器の役割低減に関する首脳級会合」を行うことを池田会長は呼びかけている。

広島・長崎は米国が1945年8月6日と9日にそれぞれ原爆を投下した都市である。

1月21日、日本とアメリカがNPTに関する共同声明を発表し、そこで「世界の記憶に永遠に刻み込まれている広島及び長崎への原爆投下は、76年間に及ぶ核兵器の不使用の記録が維持されなければならないということを明確に思い起こさせる」と述べていたことに池田会長は注意を向けた。

その上で共同声明は、政治指導者や若者に対し、核兵器による悲劇への理解を広げるため、広島と長崎への訪問を呼びかけている。

池田会長は、核保有5カ国が核戦争の予防と核軍拡競争の回避に関する声明を1月3日に発したことを指摘し、国連安保理に対して、この共同声明を基礎として、核保有5カ国(米・ロ・英・仏・中。「P5」とも呼ばれ、安保理常任理事国でもある)がNPT第6条に規定された核軍縮義務を果たす具体的措置を採るよう促す決議を採択するよう求めている。

SGI会長の核問題に関する2つ目の提案は核兵器禁止条約に関連したもので、日本を含めた核依存国や核保有国に対して、第1回締約国会合にオブザーバー参加することを強く求めている。

また、締約国会合で、条約に基づく義務の履行や国際協力を着実に推し進めるための「常設事務局」の設置を目指すことを提唱した。

池田会長は、「核兵器の廃絶に向けて、いよいよこれからが正念場となる」と述べたうえで、「私どもは、その挑戦を完結させることが、未来への責任を果たす道であるとの信念に立って、青年を中心に市民社会の連帯を広げながら、誰もが平和的に生きる権利を享受できる『平和の文化』の建設を目指し、どこまでも前進を続けていく決意」であることを誓った。(02.21.2022) INPS Japan/ IDN-InDepth News