「核兵器なき世界」へ向けて、アラブ諸国の呼びかけ

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【イスタンブールIDN=ファリード・マハディ】

完璧なタイミングとみるか、それとも単なる歴史の偶然とみるか。イスラエルの核のハンマーとイランの核のハンマー台との間に挟まれた結果か、あるいは、彼らが真摯にそれを望んでいるためか。いずれにせよ、アラブ22カ国の首脳達が、世界から核兵器をなくすべきだとする、前例のない大きな緊急の呼びかけを行った。

リビアのシルトで開かれていたサミットにおいて、アラブ諸国の首脳は、多くの重要問題に対処せねばならなかった。イスラエル・パレスチナ危機、イスラエルの国際社会に対する度重なる挑戦、イスラエルによる占領地やエルサレム東部への入植活動の継続という国際法違反、さらには、スーダンのダルフール危機、イエメン不安定化の脅威、ソマリア情勢など。そしてとりわけ、より一貫した集団的なアラブの政策の必要性についてである。

にもかかわらず、アラブ諸国は核問題に多くの時間を割いた。石油が豊かで、地球上でもっとも紛争に見舞われている人口3億5000万人のこの地域の首脳らは、リビアで行われた22回目のサミットを終えるにあたって、「核兵器なき世界」の必要性を声高に呼びかけた。

今こそ核廃絶を

とりわけ、アラブの指導者達は、2010年3月28日に2日間の会合を終えるにあたって発した首脳宣言において、「核不拡散条約(NPT)の締約国であるすべてのアラブ諸国は、核兵器を廃絶する行動を即座にとるように国際社会に呼びかけることを再確認した。」

首脳宣言は、「核廃絶を目指した国際的な試みを、具体的で法的拘束力があり、時限を切ったプログラムに変換していくことが必要。」と述べている。アラブ諸国の指導者達はまた、この目標の達成に向けた進歩は、「第一歩として、核不拡散条約の『普遍化』を必要としている。」と強調している。

アラブ諸国がこうした強い姿勢をみせた数日前には、米露両国が核兵器を30%削減する合意を行っていた。合意の調印式は4月8日にプラハで執り行われる。また、4月12日から13日にかけては、米国のワシントンで核安全保障サミットが、さらに、5月3日から28日にかけてはニューヨークで核不拡散条約(NPT)運用検討会議が開催される。

アラブ諸国の宣言は、NPT運用検討会議を見据えて、「原子力技術を平和的利用のために保有・開発するNPT加盟国の権利を尊重することの重要性」を再確認し、「いかなる場合においてもそれらの権利に制限を加えることを拒否する。」とした。

平和のための原子力

この立場は、国際原子力機関(IAEA)の方針に沿ったもので、簡単に言えば、原子力には「イエス」、核不拡散には「ノー」ということである。

石油産油国も含め、原子力の平和利用開発に関心を示すアラブ諸国が多くなってきたという実情にこの宣言は照応している。先進国の中でも、米国・英国・フランス・ロシアは、アラブ諸国のこうした傾向を後押ししており、核施設を建設する商業的な契約をこれら先進国とすでに結んだアラブ諸国もある。

たとえば、石油の豊かなアラブ首長国連邦(UAE)は、2009年10月、国内に原子炉を建設する予定を明らかにした。これによって、フランス・米国・日本・韓国の大企業の間で、400億ドルにものぼる激しい受注競争がそれぞれの政府の支援を受けつつ繰り広げられることになった。

同時に、フランス政府は、カタールとモロッコの原子力開発への支援を約束したと報じられている。エジプトとヨルダンも原子炉建設を計画しているとされる。さらに、サウジアラビアも原子力の平和利用計画を発表している。

核兵器国イスラエル

アラブ諸国首脳の宣言に戻ろう。宣言は、NPT運用検討会議が「中東を非核兵器地帯化する明確な決定を下し、現実的な措置を策定すべき。」としている。

中東で唯一の核兵器国であり、200発の核を保有しているとされるイスラエルは、これまで一貫してNPTに署名することを拒んできた。

この問題について、アラブ首脳宣言は、「NPTに加盟しIAEAの包括的保障措置の下に入ることを拒むイスラエルの姿勢は、地域において軍拡競争を引き起こし、重大な帰結を招くことになろう。」と述べている。

この点について、アラブ首脳宣言とタイミングをあわせるように、『エルサレム・ポスト』紙(3月28日付)が、「イスラエル政府は、4月にワシントンで開かれる核安全保障サミットにおいて、自国の核に関する『あいまい政策』の維持について『妥協するつもりはない』とイスラエル軍事筋が述べた。」と報じた。

アラブと世界的なキャンペーン

中東非核地帯を目指すという目標は目新しいものではない。実際、エジプトは36年前、「中東非核地帯」の確立を目指した活発なキャンペーンを立ち上げている。

1990年、エジプトのホスニ・ムバラク大統領はこのキャンペーンを刷新して、核兵器を含めた「中東大量破壊兵器フリーゾーン」を作ろうという、より大きな新しい構想を打ち出した。

このエジプトの構想は他のほとんどのアラブ諸国からの支持を集め、アラブ連盟のアムレ・ムサ事務局長は22加盟国を代表して、「中東から核兵器国をなくすには(中東大量破壊兵器フリーゾーンは)絶対必要だ」と述べ、同構想への支持を再確認した。

米国、イスラエル、欧州がそろってイランの核兵器開発疑惑を指摘する中、アラブ諸国が中東非核地帯の構想を支持していることは、とりわけ湾岸諸国の強みとなる。

さらに、2009年8月にエジプトのムバラク大統領と米国のオバマ大統領がワシントンで行った会談において、エジプトは、「核の傘」を拡大して中東を核兵器の脅威から防衛するという米国の申し出を断った。中東の包括的な平和構想に反するという理由だった。

しかし、中東の平和構想では、イスラエルが核兵器を放棄すべきかについて明確にしていない。

他方で、アラブ同盟とアフリカ連合の両方の加盟国である10カ国が、2009年7月に発効したアフリカ非核地帯化条約(NWFZ:通称ペリンダバ条約)の加盟国となっている。アルジェリア、ジブチ、エジプト、リビア、モーリタニア、モロッコ、ソマリア、スーダン、チャド、チュニジアである。

加えて、世界約100人の著名人によって始められた、「核兵器なき世界」をめざす「グローバル・ゼロ」という世界的なキャンペーンに加わっているアラブの著名人もいる。

たとえば、ヨルダンのヌール女王も、「グローバル・ゼロ」で核廃絶を目指して精力的に活動している。ヌール女王は「一国を守るために全地球の生命を破壊するという行為がいかに愚かなことであるかは、理性的な思考を持っている人には明らかでしょう。核兵器は、世界全体で、そして永久にゼロにしなくてはなりません。それ以外の選択肢はないのです」と語った。

世界中の声が重なる

地球上から核兵器を廃絶する精力的な国際的なキャンペーンが、最近ますます多くなってきた。

市民社会や草の根組織が行うものから、ノーベル平和賞受賞者や(秋葉忠利広島市長のような)市長、宗教団体が行うものまで、キャンペーンの幅は広い(広島は、長崎とともに、第二次世界大戦中における米国による原爆投下の惨禍の影響を受け続けている)。

世界に1200万人の会員を擁する創価学会インタナショナルも平和を推進しているそうした宗教団体のひとつで、核廃絶に向けた精力的な国際キャンペーンを行っている。

核兵器なき世界を目指して活動している数多くの国際的な著名人の中には、1995年のNPT運用検討会議で議長を務め、1998年から2003年までは国連事務次長(軍縮担当)の要職にあったジャヤンタ・ダナパラ博士がいる。(04.03.2010)

IPS Japan/IDN-InDepthNews

 

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