Obama Magic is Gone – Caution Outweighs Zeal - JAPANESE

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オバマ・マジックは消えた―熱意を上回った警戒心

【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ】

4年前、「『核兵器なき世界』の平和と安全を目指す」というバラク・オバマ大統領の約束は世界を駆け巡り、ただ一筋の閃光(=核爆発)によって人類が破滅することはなくなるという希望を生んだ。6月19日、オバマ大統領はこの「プラハ演説」につづく演説をベルリンで行おうとした。しかし今回は、オバマ・マジックが会場を席巻することはなかった。

核軍縮キャンペーン(CND)のケイト・ハドソン事務局長は、この理由について28日付のブログに、「オバマ大統領は明らかに、世界的な核廃絶という目標に引き続きコミットしているものの、今回の演説からは、2009年のプラハ演説で掻き立てられたようなとてつもない希望と感情の迸りを感じることはできなかった。」と書き込んでいる。

またハドソン事務局長は、オバマ大統領がベルリンで語った内容の大半は、既にプラハ演説で語られていたが、進展は極めて遅々としている、と指摘している。「CTBT(包括的核実験禁止条約)の批准や核分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約への前進といった話題は、『プラハ演説』にもあったが依然として解決していないし、核保安と民生原子力へのアクセスの問題についても同様です。振り返ってみると、米ロそれぞれの核戦力を多少削減した新戦略兵器削減条約(START)の批准が、オバマ大統領の2009年構想の唯一の成果と言えるでしょう。」

さらにハドソン事務局長は、「(ベルリン演説にこのような印象を持った)理由は恐らく、オバマ大統領が『プラハ演説』以降、自身の意図はどうあれ、核軍縮を呼びかけながら、同時に自国の核兵器については近代化推進を謳い、仮想敵国の核兵器の『抑止』効果を無効化する新システムの開発を進めた経緯を私たちが目の当たりにしてきたからだろう。」と述べている。

またハドソン事務局長は、オバマ大統領にとって(ベルリン演説後の)国内状況も決して芳しいものではないと指摘している。「ベルリン演説以降、ケリー・アヨット上院議員(共和党、ニューハンプシャー選出)が、大統領の意図には誤解があり危険なものだと評するなど、多くの共和党上院議員が大統領に容赦ない批判を浴びせている。もっとも、金融危機が世論と安全保障上のニーズに関する国民認識にどのような影響を及ぼしているかを見極めないことには全体像を判断することはできないが、控えめに見ても、核軍縮をさらに進展させるには多くの障害がある。」

「米国であれ英国であれ、核兵器に予算を費やすことへの反発が強まってきている。つまり、無駄遣いであり時代遅れだと広く見なされるようになってきているのだ。人々は、テロやサイバー戦争、気候変動といった21世紀の脅威に核兵器で対処することはできないと考えているのです。」

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、オバマ大統領のベルリンでの「核兵器なき世界」への呼びかけと、米ロ核戦力のさらなる削減を図るとの意向を歓迎しつつも、「…核兵器に関する世界的な運動の関心事となりつつある、核兵器の使用がもたらす人道的帰結の問題をみれば、核兵器の禁止と廃絶が当然の結論となる。」との声明を出した。

ICANはさらに、「オバマ大統領の演説は、核兵器は使えない兵器であり、今日の世界の安全保障環境において何の現実的な有用性もないという広がりつつある認識をさらに強化することに寄与しました。にもかかわらず、核兵器はひとたび使用されれば、恐るべき人道的帰結をもたらすことになります。核兵器は条約で禁止されていない唯一の大量破壊兵器であり、ICANは核廃絶の枠組みを定める条約の締結を呼びかけています。」と述べている。

オバマ大統領は、かつて東西ドイツを分けていた歴史的なブランデンブルク門の東側から演説し、「我々は、もはや世界絶滅の恐怖の中で生きてはいないかもしれません。しかし、核兵器が存在し続けるかぎり、我々は本当に安全とは言えません。」と宣言した。この文脈において重要なことは、オバマ大統領が核兵器を平和と正義に結び付けて次のように語ったことである。「その夢がいかに遠く見えようとも、正義のある平和とは、『核兵器なき世界』という安全を追求するということです。」

創価学会の副会長であり、創価学会インタナショナル(SGI)平和運動局長でもある寺崎広嗣氏は、「この目標は果てしなく遠く、また非現実的であると考える人もいるかもしれませんが、手の届かないものではありません。」と指摘したうえで、「21世紀の真の安全保障を考えるにあたり、私どもは変わりゆく現実を直視し、それを望ましい方向へと導くべく、さらに新しい現実を生み出す想像力を持たねばなりません。」という池田大作SGI会長の言葉を引用した。

東京に本部を置き世界に会員を擁する在家仏教組織SGIは、核兵器廃絶の必要性を世論喚起する上で先頭を走ってきた。

寺崎局長はIDNに寄せた声明の中で次のように述べている。「オバマ大統領のベルリン演説は、核兵器のない世界を目指すことを再確認するという意味では歓迎すべきものです。米ロ両国が保有する核兵器の一層の削減努力への決意は、この目標に向けての具体的なステップを示すものです。」

「表明された公約を実現するためには、米国政府は、世界における核兵器のリスクを減少させるだけではなく、さらに核兵器廃絶への具体的な行動の道筋を確立する必要があります。オバマ大統領が明確にしたように、核抑止というドクトリンは、もはやいかなる国の安全に役立ちうるものではありません。これは、世界の一般の人々がすでに感じていたことでもあります。核による破滅を盾に人類を人質にとっても、誰一人安全にはなりません。」

寺崎局長はまた、核兵器のリスク、影響、コストに鑑みる時、世界からこの破滅的な兵器をなくす実際的必要性と道義的要請の双方が存在すると指摘し、「核兵器を禁止する条約について、交渉を始めなければならない時がきたのです。」と述べている。そのうえで、「核兵器廃絶への取り組みは、全人類家族全てによる共同事業でなければなりません。核兵器国、核兵器開発を行わなかった国、そして最も重要である人類の一人ひとりが、それぞれの役割を果たさなければなりません。SGIは、核兵器の禁止と廃絶に向け人々が立ち上がるよう、草の根の意識啓発に尽力していきます。」と強調している。

まだ多くの作業が残る

オバマ大統領はベルリン演説で「まだ多くの作業が残っている」と認めたうえで、「さらなる措置について発表する」と述べた。そしてこう続けた。「私は、包括的な再検討を経て、米国の配備済み戦略核兵器を3分の1削減しても、米国とその同盟国の安全を確保でき、強力で信頼性の高い戦略的抑止力を維持できるとの結論に至りました。私は、ロシアとの交渉によって削減を追求し、冷戦期の核態勢からの脱却を目指す所存です。」

「同時に、北大西洋条約機構(NATO)同盟国と協力して、欧州における米国とロシアの戦術核の大胆な削減を図ります。そして、原子力平和利用の新しい国際枠組みをつくり、北朝鮮とイランが追求しているとみられる核保有を阻止することは可能です。」

オバマ大統領はさらに、「米国は2016年、世界中の核物質の保全を図るため2年毎に開催している『核安全保障サミット』の第4回目を主催し、包括的核実験禁止条約の米国批准への支持調達のために努力し、核兵器用の核分裂性物質生産を禁止するための条約交渉を開始するようすべての国家に呼びかけます。」と語った。

すべての核爆発を禁じている包括的核実験禁止条約(CTBT)は183か国が署名し、そのうち158か国が批准を済ませているが、核能力を持った残り8か国(中国、北朝鮮、エジプト、インド、イラン、イスラエル、パキスタン、米国)が批准をしないかぎり、発効しない。

グローバル・ゼロに向かって

予想されたとおり、6月19日のドイツのギド・ヴェスターヴェレ外相の反応は、慎重な楽観論と、ドイツ領土からの米戦術核撤去やロシアとの真の対話といったドイツ政府の関心についての間接的な言及がない交ぜになったものだった。「核軍縮に関するオバマ大統領の提案は、ドイツがその外交政策において支持している方向への大胆なステップです。」

「核軍縮に関するオバマ大統領の計画を我々が共同で実現することができれば、世界はより安全でより良い場所になるでしょう。核兵器の数を減らし、核不拡散に関する効果的な世界的ルールを構築することは、『グローバル・ゼロ』、すなわち核兵器なき世界への決定的なステップとなります。」

「私たちはこの機運を活かして協力していくことが必要です。とりわけ、ロシア政府との対話は、この機を逃してはなりません。また、欧州の戦術核も削減しようという提案は、我々にとっては特に重要なテーマです。ドイツ政府はオバマ大統領の計画を支持し、最大限の努力をする用意があります。」

6月20日、ヴェスターヴェレ外相は、ニュルンベルクで開催された安全保障に関する会議において、「依然として世界には1万7000発の核弾頭があります。もしこの数を減らすことができれば、世界はより安全な場所になるでしょう。そういう理由から、オバマ大統領の軍縮構想は、平和と安全に向けた大胆な措置なのです。」

「オバマ大統領が彼の提案に欧州戦術核を明確に含めたことは、ドイツ領に残る最後の核兵器の撤去を実現するために我々が行っている取り組みに弾みをつけることになるでしょう。」

「オバマ大統領の構想は、核軍縮をドイツ外交政策の最優先事項に据えるという我々の決定を大いに後押しするものです。もちろんこの構想を実現するには、その他の核大国、とりわけロシアも役割を果たさねばなりません。我々は、オバマ大統領の構想支持を念頭に、ロシア政府との対話を強化していきます。今後ドイツ外交政策の焦点は、核軍縮をもたらすための架け橋を築くことに置かれるでしょう。」

「核兵器なき世界は一つのビジョンであって、幻想ではありません。もちろん、それは一夜にして実現するものではありません。我々には、政治的意思、機敏な外交、そしてとりわけ、根気と戦略的忍耐が必要となります。」

チャンスは過ぎた

ドイツ連邦議会軍縮・軍備管理・不拡散小委員会のウタ・ツァプフ委員長は6月27日、ロシアの安全保障上のニーズに考慮を払わないかぎり、核兵器のさらなる削減というオバマ大統領の提案をロシアが受け入れることはないだろう、と述べた。

またツァプフ委員長は、「なぜ、軍縮がなされるまで、米国の戦術核兵器が欧州そしてドイツに存在しなくてはならないのでしょうか?むしろこうした兵器が米国に置かれていたほうが、もっと軍縮はやりやすいのではないでしょうか?」と疑問を投げかけた。

実際、戦術核撤去のチャンスは過ぎてしまったようだ、とツァプフ委員長は言う。「おそらくはシカゴでの決定(NATOサミット)の結果として出された2013年6月12日の米国の『核兵器の運用指針』は、欧州に戦術核を展開すると明記している。B61核弾頭の近代化は、同盟国を守る米国の戦略の不可欠の一部を成しているようだ(いわゆる「拡大抑止」)。」

ロシアの反応を見れば、ツァプフ委員長の意見は外れていないようだ。グローバル・セキュリティ・ニューズワイヤによると、新START合意ではすでに、両国が配備済み[戦略核]弾頭の数を2018年までにそれぞれ1550に制限することを義務づけているが、オバマ新提案の上限は、配備済みの戦略核弾頭を約1000に引き下げるということになっている。

「ロシアは、能力を強化したミサイル防衛システムを今後5年間で欧州に配備するというオバマ政権の計画に反対している。ロシア政府は、ミサイル防衛システムはイランからのミサイル攻撃から防御することのみを目的としているという米国政府の説明を受け入れず、迎撃ミサイルの使用に条件を付ける法的拘束力のある合意を米国に要求している。これまで米ロ政府間でミサイル防衛に関する多くの協議がなされてきたが、中核的な部分の相違を埋めるに至っていない。」とグローバル・セキュリティ・ニューズワイヤは報じている。

一方、ITARタス通信は6月20日、ロシアのドミトリー・ロゴジン副首相がミサイル防衛問題が未解決であることを考えると、ロシア政府はオバマ大統領の協議提案に疑念を持っていると発言した、と伝えている。

「米国がロシアの戦略的潜在戦力を迎撃する能力を高めている時に、戦略核の潜在戦力を削減するという提案をどうして真剣に受け止めることができるだろうか?我が国の政治指導部がこの約束を真剣に受け入れることができないのは明らかだ。」とロゴジン副首相は記者団に語った。

また、ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官はRIAノボスチの取材に対して、「ロシア政府は他の国が核兵器とミサイル能力を強化している状況の中で、核兵器の削減・制限について米国と二国間協議を延々と続けることはできない。」「核兵器のさらなる削減の必要性を議論する前に、(ミサイル防衛)の問題についての容認可能な解決に至らねばならない。」と語った。

冷戦期の態勢

グローバル・セキュリティ・ニューズワイヤのエレーン・M・グロスマン氏は、6月21日付の分析記事の中で、「オバマ大統領は、米ロそれぞれの配備済み核兵器をさらに削減する交渉をロシアに提案して新聞の見出しを飾る一方で、冷戦期の重要な柱を手放さないよう、密かに国防総省に指示を出していた。」と記している。

「オバマ大統領のベルリン演説からわずか数時間後、国防総省は(ウタ・ツァプフ委員長も言及している)『核兵器の運用指針』に関して大統領がこの数日の間に出した議会向け報告を公表した。これは、米国が核兵器をどれほど必要としているかを定める際の、広い範囲を対象とした指令である。」

グロスマン氏は、「指針は一方で、配備済み戦略核弾頭の追加削減の追求と、先制核攻撃準備への依存を減らすよう指示している」という核兵器専門家ハンス・クリステンセン氏のブログ記事(6月20日)を引用している。「他方で同指針は、対兵力目標選定(=戦略核戦力を攻撃目標として選定すること:IPSJ)、戦略核戦力三本柱の保持、欧州への非戦略核(=戦術核)前進配備の保持といった、冷戦期の核態勢の中核的な特徴を維持することを再確認している。」(06.30.2013) IPS Japan

 

 

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