U.S.-Russia Nuclear Arsenals Cling to Bygone Era - JAPANESE

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過ぎ去った時代の核戦力に固執する米国とロシア

【国連IPS=ジョージ・ガオ】

19世紀末のロシアの劇作家アントン・チェーホフ(1860年~1904年)は、ドラマチックな劇を作るためのひとつの黄金律を残している。それは、弾を込めた銃を劇の冒頭で観客に見せたなら、最終場面までにその銃で撃たなくてはならない、というものだ。

しかし、演劇に関するチェーホフのこの喩えは、今日の世界の兵器に適用されたならば、問題を生じるだろう。そこには、一部の国々が国際的な影響力を生み出すテコとして利用している、推定1万7300発の核兵器が含まれるからだ。

「プラウシェア財団」の「世界の核備蓄レポート(World Nuclear Stockpile Report)」によると、ロシアが推定8500発、米国が7700発の核を保有している。核兵器を保有する他の7か国はこれよりもはるかに少ない。フランスが300、中国が240、英国が225、パキスタンが90~110、インドが60~110、イスラエルが60~80、そして最近では北朝鮮が10発以下である。

「1発の核兵器の使用を必要とする軍事作戦があるとは考えにくい。10発でも人類の経験を超える大惨事をもたらし、50発となるともはや想像もつかない。」と語るのは、ワシントンの平和・安全保障関連団体「プラウシェア財団」のジョセフ・シリンシオーネ代表だ。

「敵が核兵器を使用するか否かを問わず、米国への攻撃を思いとどまらせるのに実際に必[KA3] [KA4] 要な[核兵器]数は、きめわて少ない。安全寄りにみても、数百発もあれば十分です。」とシンシオーネ氏はIPSの取材に対して語った。

「数千発もの核が必要だという考えは…時代遅れで非合理的、かつ非常に高くつく冷戦時代の遺物のようなものです。」

米国の核予算は機密扱いだが、シリンシオーネ氏は、今後10年で核兵器とその関連事業(ミサイル防衛、核活動の環境浄化、既存核戦力の技術的更新など)のために6400億ドルを費やすと推定している。

核軍縮・不拡散を世界規模で推進する上での米国の役割について、シンシオーネ氏は、「米国はおそらくこの問題についてもっとも大きな影響力を持っていますが、単独では無理でしょう。最も重要なことは、ロシアと共に核戦力を減らしていかねばならないということです。」と語った。

2011年2月5日、米国とロシアは、新しい戦略兵器削減条約(START)を発効させた。両国は、2018年までに核弾頭を1550発にまで削減し、両国の保有する大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、核弾頭搭載可能な重爆撃機の合計を800にまで削減することに合意している。

「例えば、米露が1980年代、90年代のように、核戦力を半減することに合意できれば、世界で歓迎されるでしょう。そして、どちらの国においても、官僚や政治家の反対勢力が抵抗を続けることはきわめて難しくなるでしょう。」とシリンシオーネ氏は言う。

しかし、この数年、核軍縮・不拡散に関する米国の取り組みは失速気味である。カーネギー国際平和財団核政策プログラムの責任者ジョージ・パーコビッチ氏は、この失速の原因は、部分的にはワシントンにおける国内政治に起因すると言う。

パーコヴィッチ氏は今年4月に発表した研究論文『(己の欲するところを)他者にも施せ:擁護可能な核ドクトリンに向けて』の中で、「比較的小人数の専門的な知識を持つ専門家や官僚のコミュニティーが、米国の核政策を決定している」と述べている。

パーコヴィッチ氏は、「このコミュニティーのメンバーは、米国への核の脅威や、そうした脅威に対応する最善の方法について、事実を捻じ曲げている。」「彼らのこうした態度は、米国の安全保障上の利益のためではなく、『弱腰で職責に値しない』という国内のライバルからの攻撃から自身のキャリアを守るという動機に起因している。」と主張している。

核は米国主導の体制転覆を抑止する

[KA5] またパーコヴィッチ氏は、前記の研究論文の中で、「イランや北朝鮮、パキスタンは、自前の核を持つことで米主導の体制転覆を抑止しうると考えている。つまりこれらの国が恐れるのは、いずれも核兵器を持っていなかった2003年のイラクと2011年のリビアが辿った運命だ。」と指摘している。

将来的に米国の国益に反して行動している国(抑圧的な国であるか否かに関係なく)が体制転覆を防止するために核の保有を目指した場合、米国政府はどのように対処すべきかというIPSの質問に対して、パーコヴィッチ氏は、「それは非常に難しい問題だ」と回答した。

「核兵器の唯一の役割は、自らの国への侵略を防ぐという点にあるので、侵略を恐れる国家や指導者は、核保有あるいは米国との同盟を魅力的なオプションと考えがちです。」

「国家が核を保有しなくても、侵略あるいは体制転覆を恐れなくてもよくなれば、核不拡散は容易に達成できるでしょう。」

「しかしここではっきりと問題になってくるのは、一部の政府は自国民や隣国に対して極めて残虐で抑圧的なため、そうした政権を転覆させるような試みはしないと誓うのは困難だということです。」とパーコヴィッチ氏は付け加えた。

パーコヴィッチ氏は、米国が抑圧的体制に対して圧力をかける場合は、政治的・道義的手段、或いは制裁のみに制限し、対象国が隣国を攻撃したり核保有を追求したりしない限り、軍事行動は起こさないと明確にすることが必要だと提言している。

『核の恐怖:核兵器の歴史と将来(Bomb Scare: The History and Future of Nuclear Weapons)』の著者であるシリンシオーネ氏は、イランや北朝鮮の場合、核をめぐって張り合うことは逆効果だと論じている。

「(両国にとって核保有を追及することは)安全保障環境を好転させるどころか、逆にさらなる孤立を招くだけだと思います。核保有を追及する政策は、両国を真に支援して経済を築き、影響力を増大させるような国際的連携をかえって妨げる結果となるのです。」

「すなわち、これらの国が核を取得したり保持したりすることを阻止しようとするならば、彼らの正当な安全保障上の懸念に応える必要があります。少なくとも、これらの国を攻撃しない、あるいはその隣国からの攻撃もないという安全保障上の確証をこれらの国に与えることが必要になってきます。」

オバマ大統領の核の遺産

バラク・オバマ大統領は、昨年12月にワシントンの国防大学で行った演説の中で、「ミサイルにはミサイル、弾頭には弾頭、砲弾には砲弾という過去の時代は、もう過ぎ去った。」と述べた。

シリンシオーネ氏は、核軍縮・不拡散の追求は、オバマ氏にとって若いころから重要な問題だったという。オバマ氏が大統領として初めて行った、2009年4月のプラハでの外交演説と、再選後初めての外交政策演説は、いずれも核兵器をテーマとしていた。

「大統領は数多くの緊急の問題に直面しているが、その中でも、地球全体を破壊の脅威にさらしているのは、地球温暖化と核兵器という2つの問題だけなのです。」とシリンシオーネ氏は語った。

ワシントンの中では核軍縮・不拡散への反対意見も強いが、地球温暖化や移民問題、税制改革などにおける反対勢力と比較すれば、それほど強力なものでもない。

シリンシオーネ氏は「今日核問題は、大統領が比較的少ない時間で米国と世界の安全保障を大きく改善しうる領域です。」と指摘したうえで、「核を削減しようというオバマ大統領の取り組みは、ジョン・F・ケネディ大統領が1960年代に始め、ロナルド・レーガン大統領が1980年代に加速した歴史的な『弧』の最後を締めくくるものになるかもしれません。」と語った。

「(オバマ大統領は)それをやるのに3年半の任期を傾けることができます。今始めれば、任務を完遂することは可能でしょう。オバマ大統領は、核兵器の数を減らし、究極的にはその脅威を地球上からなくすという後戻りできない道に、米国の核政策を乗せることが、可能なのです。」とシンシオーネ氏は語った。(05.17.2013) IPS Japan

 

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