The Frightening Scenario of the Nuclear War - JAPANESE

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核戦争の恐怖のシナリオ

IPSコラム=アイラ・ヘルファンド】

2008年にバラク・オバマ氏が米国の大統領に選出されて間もなく、世界の医療関係者数百名が、オバマ氏と同年先だってロシアの大統領に就任していたドミトリー・メドベージェフ氏に対して、核兵器廃絶を最優先課題とするよう求める公開書簡を送った。

その書簡には「貴殿らはこの困難な時局にあって多くのさし迫った危機に直面していますが、核戦争防止の必要性に比べれば、すべてがかすんでしまいます。今から千年もたてば、貴殿らがこれからの数年間でなすほとんどのことは忘れ去られているでしょう。しかし、核戦争の脅威をなくした指導者のことは忘れないに違いありません。どうか我々の期待を裏切らないでください。」と記されていた。
残念なことに、私たちが恐れていたとおり、経済危機に対処するという要請がその他の問題を圧倒してしまい、これまでのところ、ロシアと米国の指導者は私たちの期待を裏切っている。オバマ氏は先般の再選で、世界を核軍縮の道へと導く新たな機会を手に入れた。この機会は決して無駄にしてはならない。

2008年以来、私たちは、核兵器のもたらす危険性について一層理解を深めてきた。米ロ間の大規模戦争が勃発すれば、全地球規模で破滅的な人道上の結果がもたらすであろうことを、私たちは何十年も前から知っている。

今や私たちは、例えば南アジアで起こるかもしれない、はるかに「限定的な」地域核戦争ですらも、人類全体への脅威になりうることを知っている。アラン・ロボック氏、オーウェン・ブライアン・トゥーン氏らは、インドとパキスタンがそれぞれ広島型核兵器50発を使用するシナリオを検討してきた。これは、他国の都市目標に対して向けられている世界全体の核兵器2万5000発超のわずか0.4%に過ぎない。その研究結果は、私たちの想像を絶するものだった。

核爆発と激しく燃えさかる炎、放射線汚染によって、最初の1週間で2000万人以上が死ぬ。しかし、世界全体に及ぼす影響はもっと甚大である。核爆発で生じた炎の嵐が500万トンもの煤煙(ばいえん)を大気圏上層部にまで巻き上げ、太陽光を妨げて、10年間にわたって地球全体の気温を平均で1.3度低下させる。このため、南アジアから遠く離れた地域でも、気温の急激な低下に伴い、降雨量が減少し、食物の生育期間が短くなるため、食物の生産量が減少する。

ムトゥル・オズドガン氏の研究によれば、米国のトウモロコシ生産量は十年にわたって、平均で12%減少するという。またリリー・ジア氏の研究では、中国の中期のコメ生産が10年にわたり15%減少する。その他の穀物についてはさらに大きな減少が見込まれると最近の予備的な研究は示している。

世界にはこのように大規模な食糧生産減少に対応できる準備がない。現在の世界の穀物備蓄は3カ月弱分しかなく、これらの生産減少に対する適切な緩衝とはなりえない。さらに、国連の最新のデータによると、現在世界には栄養不良の人びとが8億7000万人もいる。また、別の3億人は、栄養状態は問題ないが、ほとんどの食料を輸入に頼る国に住んでいる。合計して10億人にもなるこれらの人びとは、この「限定的な」戦争後に飢餓状態に陥る危険性がある。

米ロ間で大規模な戦争が起これば、その結果はより破滅的なものになる。数億人が直接殺され、間接的な気候の変化はより大きなものになるだろう。世界の気温は平均で8度下がり、北米とユーラシア大陸内部では下落幅が20度以上にもなる。北半球では、3年間にわたって地表が霜で凍りつく日々が続く。食糧生産は止まり、人類の大部分が飢える。

冷戦終焉以来、私たちは、この種の戦争が起きるはずなどないと考えてきた。しかし、それは起きうるのだ。米ロ核二大国は、依然として約2万発の核弾頭を保有している。そのうち2000発以上は15分以内に発射可能なミサイルに搭載されており、他国の都市を30分以内に破壊することができる。

米国とロシアがこの巨大な核戦力を保持し続ける限り、意図的であれ偶発的であれ、それらが使用される現実の危機が存在する。1979年以来、少なくとも5回、自らが攻撃の危機にさらされているという誤認に基づいて、超大国の片方が他方に対する核攻撃の開始を準備するという事態があったことを私たちは知っている。その最近の事例は1995年1月に起こった。その当時存在した、もう数分で私たちを核戦争に巻き込もうとした条件は、今日もそれほど変わらず存在している。もしこの次このような事故が起こったときは、前回の時ほど幸運に恵まれないかもしれない。

このような深刻な危機意識に基づいて、この10月、35か国が全ての核兵器削減に向けた新たな呼びかけを国連において行った。国際赤十字・赤新月運動もまた、核兵器廃絶を呼び掛けている。2013年3月、ノルウェー政府は、核不拡散条約のすべての加盟国を招いて、「核兵器の人道上の結果」に関する国際会議を開催する。

米国とロシアはこれらの動きを取り込んで、検証可能で執行可能な核兵器禁止条約の交渉を先導すべきだ。こうした交渉は容易ではないが、それ以外の方法は考えられない。私たちは、幸運をもって世界の安全保障の基盤とすることはできない。核兵器を廃絶しなければ、いつの日か運を使い果たして核兵器が使用され、私たちが培ってきたすべてのものが破壊されるだろう。これ以上に大事なことがあるだろうか。(December 2012) IPS Japan

※アイラ・ヘルファンドは、核戦争防止国際医師会議(1985年のノーベル平和賞受賞者)の共同代表。

 

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