Israel’s Hypocrisy on a Nuclear Middle East - JAPANESE

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中東核武装化についてのイスラエルの偽善

【国連IPS=タリフ・ディーン】

先週、世界の指導者らが荷物をまとめて帰途につくなか、国連総会の一般討論において印象に残ることが起こった。9月27日に登壇したイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が「核の赤いライン」を示す漫画のようなフリップ(右上の写真)を用いた派手な演説を行ったのだ。全米のほとんどの主流紙がこれを1面で報じた。

ネタニヤフ首相は、イランに対して、この赤い線を超えないよう警告した。もっとも、イスラエル自身は、もう何年も前に核武装し、この線を越えてしまっている。

『中東レポート』のムーイン・ラバニ編集委員はIPSの取材に対して、「ネタニヤフ首相が核兵器に関して世界に説教を垂れるバカバカしさはまさにこれです。なんといっても、中東の核拡散の危険について(核兵器国である)イスラエルの指導者が警告しようというのですから。」と語った。

実際のところは、イスラエルが中東で唯一の核兵器国であり、過去に何度もこの大量破壊兵器の使用をほのめかしてきたのみならず、建国以来、一貫して、かつ強硬に、核不拡散条約(NPT)の批准を拒否してきたということにあります、とラバニ氏は語った。

「ネタニヤフ氏の発言は、例えれば(『ハスラー』誌の出版元である)ラリー・フリント氏の口からポルノ否定を聞くようなものです。ただしフリント氏の名誉のために言っておくと、彼はネタニヤフ氏ほどのひどい偽善を語るとは思えませんが。」とラバニ氏は語った。ラバニ氏は、この政治的に不安定な地域の政治について広く執筆してきた中東専門家である。

しかし、国連総会一般討論において発言した中東諸国の指導者のほとんどが、核政治に関するイスラエルの二重基準を受け入れていたかのようだった。つまり、ネタニヤフ演説に対する攻撃的な反論はついに聞かれなかった。

今年の国連総会では、ヨルダンのアブドラ・ビン・アル=フセイン国王やパレスチナのマフムード・アッバス大統領のような常連のアラブ指導者のほかに、エジプトのムハンマド・モルシ大統領、イエメンのアブド・ラッボ・マンスール・アル=ハーディー大統領、リビアのムハンマド・ユースフ・エル=マガリエフ国民議会議長(大統領格)、チュニジアのムンスィフ・アル=マルズーキー大統領など新世代のアラブ指導者が演説を行った。

あるアジアの外交筋は、「核問題ばかりを取り上げたネタニヤフ首相の演説は激しい口調で終わったが、ほとんどの中東諸国の指導者ら演説は哀願する調子で終わった。」と語っている。

なぜアラブの指導者らが黙して語らないのかという問題について、イアン・ウィリアムス氏(「フォーリン・ポリシー・イン・フォーカス」「デッドライン・パンディット」の上級分析官)はIPSの取材に対して「おそらく、一つの問題は、アラブの指導者と市民はイスラエルが核兵器を持っていることはもちろん知っているが、それが西側諸国においてどの程度タブーとされているのか測りかねているのではないか。」と語った。

「したがって、彼らは他の場所ではイスラエルの核能力について言及するが、自らは実際に200発の核兵器を保有しながら核爆弾の漫画を描いたフリップを構えて演説するネタニヤフ首相の目に余る偽善については、なかなか反撃しようとしなかった。」と、中東政治をながく観察してきたウィリアムズ氏は語った。

イランは、原子力計画はあくまで平和目的だと主張し続けているが、イスラエルは核兵器開発の疑いがあるとしてイランを批判し続けている。

ネタニヤフ首相は国連総会一般討論で、「考えなくてはならないのは、イランがいつ核武装化するかではなく、どの時点になったらもはやイランの核武装化を止めることができないのか、ということだ。」と演説した。

ラバニ氏は、「多くの識者が、信管付きの核爆弾を描いた『ルーニー・チューンズ』の絵で満載の彼の発言が――文字通りの意味でも比喩的な意味でも――いかに漫画的なものであったかについてコメントしています。」と語った。

またラバニ氏は、「もしネタニヤフ首相が関心を引きうるような観点を提示したかったのであれば、中東で核兵器やその他の大量破壊兵器を禁止する地帯を創設しようとの長年に亘るエジプトの努力をイスラエルがなぜ否定してきたのか、ネタニヤフ首相が国連の演壇に登る数日前に、中東非核地帯の創設について話し合うため今年末に予定されている、米国も支持したヘルシンキ会議への参加をイスラエルがなぜ拒否したのかについて、説明したであろう。」と付け加えた。

ラバニ氏によれば、アラブの指導者の中にはイスラエルのイランに対する好戦的姿勢を直接的に問題にしない傾向があったが、それは、一部のアラブ諸国がこうした攻撃が現実化することを真に望んでいるためでもあるという。

また、イランの封じ込めが外交政策上の最大の目的となっているような影響力のあるアラブ諸国との関係を崩したくないか、イスラエルとの紛争においてイラン支持に回っていると見られることで米国との緊張を生みたくないと考える国もある。

「ほんの数十年前とはずいぶん異なったアラブ世界の姿があります。しかし、それも変化しつつあり、根本的な変容のプロセスにあるのです。」とラバニ氏は語った。

実際、エジプトのモルシ大統領はパレスチナ問題に演説の多くを割き、ホスニ・ムバラク大統領時代には考えられなかったような発言の仕方をした。「同じようなことが今後数年でもっと起こってくるはずです。」とラバニ氏は語った。

またラバニ氏は、現在中東地域では、かつてこの地域を帝国主義的な動機で支配したかつての英国やフランスと同じ道を米国がたどっているという見方が広がっていると指摘した上で、「中東における米国の影響力は次第に陰りを見せています。」と語った。

イスラム世界各地に抗議活動を引き起こした、バカバカしいが明らかに侮辱的なビデオ映像「ムスリムの無知」によって引き起こされた論争について、アラブ諸国の指導者らが執拗に発言を繰り返す必要性を感じている理由も、こうした流れによって説明できる部分もある。

「このビデオ映像、あるいは少なくともそれに関する報道に、アラブ地域に人々は心の底からの怒りを覚えました。そして、この映像を非難することは、あまりにも米国寄りだと見られてきたアラブ諸国の指導者らにとって、国家の威信の最後の一かけらは失っていないことを国民に証明するための便利な方法となったのです。」とラバニ氏は語った。

ウィリアムズ氏は、「モルシ大統領はこの問題となったビデオ映像について言及することに比較的慎重だった。」と指摘したうえで、「西側のキリスト教指導者らは過去には冒とく罪を適用するよう呼びかけたこともあり、言論の自由について原理主義的な態度をとった国はほとんどない。モルシ大統領のやり方は、国内でも国外でも批判を避けるためのニュアンスを含んだバランスのとれたものになっています。」と語った。

またウィリアムズ氏は、「シリア問題に関してイランを関与させようとするモルシ大統領の企図(自国に加えて、イラン、サウジアラビア、トルコの4カ国からなるシリア問題を協議する委員会を創設する案を提唱等)は、米国・イスラエルのコンセンサスにもちろん挑戦するものでしたが、彼に連なる者はあり、すでに結果も出ているように思えます。つまり(イランのマフムード・)アフマディネジャド大統領のとりとめのない演説ではシリア問題に言及しなかったわけですから。」と語った。(10.01.2011 IPS Japan

 

 

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