Will Austerity Prompt Nuclear Disarmament? - JAPANESE

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│フランス│緊縮財政で核軍縮は進むか?

【パリIPS=ジュリオ・ゴドイ】

変化する国際政治秩序と国内の劇的な予算情勢により、フランスは、1950年代末以来保持してきた極端に高価な核戦力の放棄を検討せざるを得なくなってきた。

フランスの政治家や識者の一部は、この火急の必要に対応することが意義あることであるかに見せかけるため、核不拡散条約(NPT)を強化し、世界の核戦力を削減する国際的取り組みに向けた一歩とこの動きを位置づけようとしている。

しかし、深刻な予算危機に直面したフランス政府が、ポール・キレ元国防相が言うように「そもそも発射することが想定されていない」コストのかかる兵器を維持することができなくなった、というのが実情である。

6月半ばにこの論争を意図せず起こしたのは、与党社会党のミシェル・ロカール元首相であった。ロカール氏は、パリの放送局BFMのインタビューにおいて、核兵器をあきらめれば「フランスは年間160億ユーロを節約し、まったく無用な兵器を放棄することができる」と語った。

ロカール氏は後にこの発言は「冗談だった」と述べ、核軍縮を論じることは「非常に重大なことなので、もしそれに疑問を呈そうとするならば、慎重にやらねばならないし、時間をかけて準備し、真剣な議論に耳を傾けねばならない」と語った。

冗談かどうかは別として、ロカール氏の発言は雪崩のような論争を引き起こした。そしてまだ明確な結論はでていない。

他方、社会党のフランソワ・オランド大統領は、予見しうる将来において政権が核兵器を放棄するつもりはないとしている。

オランド大統領の立場は、核兵器を保有することで、たとえ見せかけのものとはいえ、フランスに比類なき政治的地位が与えられ、他の4つの国連安保理常任理事国である英国、中国、ロシア、米国と対等になれるという古い議論を下敷きとしている。

核兵器を持たないフランスは、その現実的な地政学的役割に戻ることになるだろう。つまりは、平凡な経済と動乱の国内情勢に打ちひしがれた中堅国家に回帰するということだ。

国際戦略研究所(パリ)のパスカル・ボニファス代表は、「冷戦の終了と、現在起きている国際情勢の地殻変動に直面して、(フランスは)自らの世界政治戦略と国家安全保障政策における核兵器の役割を再考せざるを得なくなっているのです。」とIPSの取材に対して語った。

しかし、ボニファス氏は、「もしフランスが核兵器を放棄するのならば、その国際的な大国としての信頼性は失われ、戦略面においてフランスの地位は格下げになるだろう。」と警告している。

「(1950年代末に)シャルル・ドゴール大統領(当時)が核武装を決定したとき、その目的は、米国やソビエト連邦と並ぶ世界大国としてのフランスの地位を保つことにあったのです。」とボニファス氏は指摘した。

つまり、ドゴール氏のフランスにとって、核兵器とは軍事的必要から保有されたものというより、地政学的な象徴であったことになる。ドゴール大統領は、目に付かない形で、冷戦真っ盛りの1961年12月に出された公式声明でこのように認めている。

「これから10年後には、我々は8000万のロシア市民を殺害しなくてはならないかもしれない。ソ連がたとえ8億のフランス人を殺すことができるとしても、8000万人のロシア人を殺害する能力を備えた国を攻撃しようとは思わないだろう。」

フランスが直面している経済的苦境

それから50年後、冷戦の記憶が悪夢の領域に消え去って行く中、8000万のロシア市民を殺さなくてはならない可能性は、以前にもまして考えづらくなっている。フランスにとっての新たな国家的悪夢とは、公的な債務危機であり、国際的に見た経済パフォーマンスの悪化という事態である。

6月中旬に発足したオランド政権は、すでに予測されている国民総生産(GNP)4.4%分の赤字に加えて、予測されていなかった100億ユーロにものぼる予算不足に直面している。

フランス会計検査院は、7月2日に発表した報告書の中で、オランド政権の前のニコラス・サルコジ政権が予測した4.4%という高水準の赤字を解消するために、増税し支出を削減しなくてはならないと警告している。

欧州委員会の数値によると、フランスは、2013年の赤字を3%に抑えるためには、増税あるいは歳出削減で240億ユーロを捻出しなくてはならない。

さらに追い打ちをかけるように、自動車メーカー「プジョー」のような大企業が、大量のレイオフ(一時解雇)と海外への大規模工場移転の意向を明らかにしている。

オランド大統領は、現在の経済不況に耐えるために国家財政を救いフランス産業を支援すると同時に、より競争的な将来に向けて準備を進めるという、途方もない政治的課題に直面している。

多くの識者や政治家によれば、不必要な支出、とりわけ純粋に象徴的な地位しか持たない核戦力を減らし、それをより合理的な使途に振り向ける誘因がかつてなく大きくなっているという。

国会国防委員会の元委員長であるキレ氏は、IPSの取材に対して「核兵器は高価な愚策です。」と指摘した。またキレ氏は、核兵器がフランスにとっての「生命保険」であるという従来からの議論を真っ向から否定し、「(生命保険)というよりもむしろ死亡保険と言った方が相応しい。」と語った。

キレ氏は、今後数年のうちには核兵器関連予算が増加するのは間違いないという。それは、核兵器体系を更新し、潜水艦のような高価な関連装備を調達する必要があるからである。

1986年から92年まで首相官邸で軍事顧問務めたベルナール・ノーラン退役将軍もまた、核軍縮を呼びかけている一人である。

「核兵器が必要だという議論は冷戦期には説得力があったかもしれないが、世界の戦略環境は1990年以来大きく変化しました。1980年代と同じような議論をしていても仕方がないのです。」とノーラン氏は語った。

核兵器なき世界を提唱している国際的プロジェクト「グローバル・ゼロ」の一員であるノーラン氏は、不必要な資産を維持する圧力にオランド大統領が屈しているように見えることに遺憾の意を示した。

「この件に関するオランド氏の発言は、きわめて同調主義的なものです。」とノーラン氏は指摘した。

しかし、匿名で答えたその他の軍事専門家らは、フランスのいかなる元首も、核兵器国としてのフランスの地位を自発的に消し去ってしまった人物として歴史に名を残したくないと考えるだろう、と述べている。07.18.2011 IPS Japan

 

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