France's Fuzzy Face on Nuclear Abolition - JAPANESE

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核廃絶にあいまいな態度を貫くフランス

【パリIDN=ジュリオ・ゴドイ】

フランス外務省に対して、中東の非核兵器地帯化に関する同国の立場を問うたならば、フランスの大使がニューヨークやジュネーブの国連で行った演説を紹介して、わが国は核不拡散条約(NPT)の世界的な履行を支持しているという公式見解が返ってくるだろう。

確かにフランスは、NPT運用検討会議において採択された決議の目標、とりわけ中東における非核地帯の創設を1990年代中盤以来支持し、1995年会議における特定の決議(中東非核兵器地帯化に関するもの:IPSJ)の履行を呼びかけている。

しかしこれまでの事実関係に目を向ければ、このフランスの見かけ上の強固な立場は、結局は中東非核兵器地帯を創設するという大義に対する単なるリップサービスに過ぎないことが分かるだろう。とりわけ、これがイスラエルの核兵器政策を問題化したり、先の決議履行(=イスラエルのNPTへの加盟)を迫るときに、そのことが明らかになる。

中東の非核兵器地帯化に対するフランスのあいまいな態度は、2010年5月にははっきりとしていた。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、非核兵器地帯化は「偽善的で」「欠陥だらけ」だと評したときのことである。この声明は、NPTの189の加盟国が中東の非核兵器地帯化に関する合意に達したことを受けての反応であった。

NPT未加盟のイスラエルは、「最終文書は中東の現実や中東や世界全体が直面している真の危機を無視している。決議が非常にゆがめられた性格を持っているのだから、イスラエルはその履行に参加する気はない。」と批判した。

安保理理事国であり核兵器国でもあるフランスは、このイスラエルの明示的な態度に対して反応を示さなかった。

フランスの二面的な戦略はすでに2005年から明らかであった。このとき、ジュネーブ軍縮会議(CD)のフランソワ・リバソー仏大使は、同会議の会合において、イランがその「秘密の核開発計画」によって「核拡散の危機」を引き起こしているとして非難した。他方で、リバソー大使は、NPT未加盟のインド、イスラエル、パキスタンについては、「交渉を通じて、核不拡散と輸出規制の国際基準に可能なかぎり引き込む」ことが「のぞましい」と控えめに述べていたのだった。

この3か国はいずれも大規模な核戦力を保有している。こうした対話によっては、少なくとも210発の核兵器―これはインドとパキスタンの核兵器保有量の合計を上回っている―を保有するイスラエルを抑えることができていないという事実を、フランス政府は無視しているようだ。

したがって、イランの核開発疑惑に対する非難を繰り返すことを除いては、中東に関する議論に関して、フランスに見るべき貢献がないことは、驚きに値しない。2011年11月9日、アラン・ジュペ外相は、国際原子力機関(IAEA)の出した評価によって「イランの核開発に関するフランスの懸念は強まることになった」と述べた。

さらにジュペ外相は、「我々はイランに対する外交的な圧力を強めるうえで、次の段階に進まなければならない。もしイランが国際社会の要求を拒み、すべての協力を拒否するのならば、我々は国際社会の支援を得て、イランに対する前例のない規模の制裁を発動することになろう。」と付加えた。

一方でジュペ外相は、イスラエルの核兵器政策や、同国が中東非核兵器地帯化に関する国際会議を拒否していることについて、批判したことはない。

外交関係の専門家らは、EU諸国のほとんどに典型的なこうした二重基準ゆえに、この政策を巡るフランス外交の見識と公正さに疑問を投げかけている。

核不拡散・軍縮議員連盟(PNND)フランス支部のジャン-マリー・コリン代表は、「政府による主張とは反対に、核軍縮に関する議題と討論は、NPT運用検討会議が最後に開かれた2010年5月で終わったわけではない」と語った。

コリン代表は、国連と市民社会組織は(NPT運用検討会議後も)引き続き核兵器のない世界実現に向けた取り組みを進めてきた点を指摘した。そしてそうした取り組みの中でも、とりわけ具体的な成果として、2012年中東会議の実現に向けた動き、特に「フィンランド外務省のヤッコ・ラーヤバ外務事務次官がファシリテーターとして任命された」重要性を強調した。

またコリン代表は、フランス政府は、様々な公式発言とは裏腹に、「実質的な核軍縮を巡る政治的駆け引きにおいては、部外者に留まっている。」と指摘した。

フランス政府は言行不一致が目立っているが、市民社会の方は、大量破壊兵器、とりわけ核兵器が中東で拡散する可能性を危惧している。平和団体の「元追放者・戦時捕虜・抵抗者・愛国者全国連盟」(FNDIRP)はこの1月に発表したコミュニケで、対イラン戦準備を進めているイスラエルを批判している。

またFNDIRPは、イランはNPT加盟国であり、核技術を民生用にのみ利用すると繰り返し公約している点を指摘した。また同団体は、イスラエルによるイランへの軍事攻撃は、中東全域にわたって「予測不可能な結果」をもたらしかねず、さらに、「イランの核研究開発を阻止するために行うそうした攻撃の有効性は不透明であること」に注意を向けるべきだとしている。

さらにFNDIRPは、中東におけるNPTの完全履行を呼びかけ、国連の枠内での議論が「もっとも有益なこころみ」であると主張した。そのうえで、イスラエル、イランをはじめとした中東のすべての国に対して、「中東のすべての国に平和と安全をもたらす非核兵器地帯の創設に向けて必要な措置を国連の枠内で履行すること」を強く求めている。

しかし、こうしたアピールは希望的観測に過ぎないと予測するフランスやスイスの外交専門家もいる。

スイス連邦技術研究所安全保障研究センター(CSS、チューリッヒ)の研究者らは、「構造的な要素を見れば、(中東における核)軍縮は時期尚早である」と考えている。

CSSのリビウ・ホロビッツ研究員は、「中東の核兵器―ここに留まる」とわかりやすいタイトルを付けられた報告書の中で、「イスラエルにとって、核軍縮は必要でも望ましくもない。」一方で、「イランの核問題解決が最重要課題であるが、解決はまだ目に見えていない。」と記している。こうした理由によって、また中東のその他の現在の動きに鑑みるならば、「中東でこの先もっとも起こりそうな情勢の下では、軍縮措置が採られることはないだろう。」と予測している。

そのうえでホロビッツ氏は、それよりも、「現在の状況を保つだけでも相当に難しい課題になる。」と付加えた。

ホロビッツ氏はこの報告書の中で、非核兵器地帯という概念は1950年代にポーランドが中欧において提案したものに淵源がある点を指摘した。またホロビッツ氏は、「この構想は実現することがなかったが、これまでに非核兵器地帯が5つできている。中東では、イスラエルが1960年に核保有国になって以来、エジプトとイランが率いる地域のアクターが、非核兵器地帯の創設を呼びかけることでみずからの外交力を高めようとしてきた。」と語った。

中東非核兵器地帯創設に向けた現在の機運は、2010年のNPT運用検討会議で採択されたいわゆる「行動計画」によって生み出された。同計画では、国連・ロシア・英国・米国の四者に対して、中東諸国と協議の上、「核兵器とその他すべての大量破壊兵器を禁止する地帯を中東に創設することに関して」、2012年に会議を招集する準備を進めるよう要求している。

ホロビッツ氏は、現在の政治的なスケジュールでは、フィンランドで会議を開くにはなかなか困難があると指摘した。「米国政府は今年開かれる大統領選挙に手一杯な状況であるが、すべての中東諸国を参加させ、一般的な意見交換にとどめ、とりわけ今後の行動計画については全会一致の決定方式をとった、短い会議を望んでいる。」とホロビッツ氏は警告した。

さらにホロビッツ氏は、2015年に開かれる次のNPT運用検討会議もそれほど先のことではないと指摘した上で、「イランやシリアのように制度を悪用している国にとっては、自らのNPT遵守問題から目をそらさせるための強いインセンティブと貴重な機会を(運用検討会議は)提供することになるだろう。こうして、もっともありそうな帰結は、各国がこれ以上態度を硬化させることなく、レジーム全体に長期的な傷をつけることのないような、よく運営されてはいるがしかし取り立てて実りのない外交行事ということになるのではないか。」と語った。

従ってホロビッツ氏は、「(中東非核兵器地帯実現の)可能性はきわめて低いと言っておくのが安全でしょう。」と結論付けた。(03.01.2012) IPS Japan/IDN-InDepthNews

 

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