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【ジュネーブIPS=ジョナサン・フレリックス】


核兵器に関する新しく強力なストーリーが世界中で生まれている。その新しいストーリーは、皆が共有することができるものであるがゆえに、インパクトを持っている。それは、核のフィクションを核の現実に置き換えるものだ。2012年は中東における軍事行動の警告から始まったが、核兵器5大国(米国、ロシア、英国、フランス、中国)における新しいリーダーシップで幕を閉じることになるだろう。この新しいストーリーとはいったい何で、それは何をもたらすのだろうか?

このストーリーの中でもっとも短いバージョンは、「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)によって語られているものだ。「核兵器のない世界が想像できますか?」と誰かに聞いてみるといい。「もちろんできます」(I can)という答えが返ってくるに違いない。


もう少し長いバージョンのひとつが、スコットランドで教会関係者が昨年末に開催した国際セミナーで聞かれた以下のようなものだ。彼らの多くは、核軍縮を支持している。


「私たちは、時代遅れで扱いづらく、ひどくコストがかかり、しかも機能しない核の『傘』の下に生きています。今日、人々はグローバル・コミュニティの一部として暮らしていると考えています。彼らは、命を危険に晒すのではなく、命が守られるような環境で生きていきたいと願っているのです。つまり核兵器は誤りであり、なくさねばなりません。今こそ(核廃絶を目指す)運動に参加すべきときです。一人一人の人間には役割があり、何か出来ることがあるはずです。皆でともに大きな変化を生み出していこうではありませんか。」


こうした新しいストーリーによって、核兵器は攻勢にさらされている。各国指導層の間でも、以前よりも強い政治的、社会的圧力が存在しており、国連では130ヶ国が核兵器禁止条約(NWC)を支持し、5000人の市長と数千人の国会議員、著名人らが核廃絶運動に加わっている。また、核兵器への挑戦は、地理的な面(各地に創設されてきた核兵器禁止地帯の存在)、法的な面(国際人道法)、経済的な面(核兵器の維持を困難にする財政赤字、国家の負債、核兵器関連企業に対する市民による資本の引き上げ〈ダイベストメント〉)と、多方面にわたっている。


今では様々な国の政府高官や将官らが、核戦略の問題点を暴露し始めている。また、気候科学は、「核は環境に悪影響を与える」との判断を下しており、医者や科学者、法律家は、核兵器の正当性を疑っている。また、各種映画やウェブサイト、書籍も(核兵器の問題点に関する)公な議論を生んでいる。そして世界の諸宗教も、道義的、倫理的、精神的観点から核兵器を非難している。さらに、昨年発生した福島原発事故のような大惨事は、いかに平和的な外観を装ってはいても、核エネルギーというものが致命的であり、長期にわたる悪影響を引き起こすということを、人々に改めて思い知らせることとなった。


これまで核兵器を容認してきた世界的な仕組みは崩壊しつつある。人間社会、生態系、そしてこの地球全体に関して、核兵器には全く出番がないと感じる人がますます多くなってきている。


しかしだからといって、現在の核体制に挑戦している人々は、それほど楽観的でいるわけではない。核兵器を保有する僅か5%の政府が、(核廃絶という)公益を拒絶し、軍縮の義務を放棄する一方で、核兵器を持たない世界の95%の政府は、核兵器廃絶という国際社会の大多数の意思を実現できずにいるのだ。


核に関する新しいストーリーと古いストーリーのそれぞれが2012年に導くシナリオは異なったものだ。3つの例を紹介しよう。


第一に北東アジア。ここでは、核抑止の傘は時代遅れで穴だらけになっており、現状維持を図ろうとする不安定な仕組みである核拡散防止条約(NPT)が崩壊しつつある。北東アジアにおける「核安全保障サミット」とは、それ自体、語義矛盾であるが、今年の核安全保障サミットは、韓国の首都ソウルで開催される予定だ。


核の新しいストーリーは、韓国出身の潘基文国連事務総長が「抑止という感染的なドクトリン」と啓発的に表現したものから、地域的な教訓を引き出すことができるだろう。核抑止を実践している9ヶ国のうち8ヶ国は核安全保障サミットに招待されているが、9つ目の国は韓国の隣国(=北朝鮮)なのである。感染には治療が必要である。それは例えば、朝鮮半島の非核化などの共通の地域的目標をめぐる開放的な関与といったものだ。スコットランドで開催した先述のキリスト教徒の集まりでは、核廃絶という目標を社会の中でより高い位置におくために、キリスト教徒と仏教徒によってどのような信頼醸成措置が取れるかについて話し合われた。これらの諸教会はこれまで25年にわたって、朝鮮半島を南北に分断している非武装地帯(DMZ)の両側から現状を打破すべく努力を続けている。


第二に中東である。ここもまた核の傘が機能していない地域であり、ここに核兵器禁止地帯を確立できるか否かに、NPTの将来がかかっている。この目標に関する国連会議が、17年の遅延の後に、今年ようやくフィンランドで開催される予定だ。


しかし、核に関する古いストーリーが、その国連会議に暗雲を投げかけている。今再び、「核の二重基準を強行することが中東にとっての問題ではなく解決策だ」という近視眼的な理屈がまかり通っている。これまでもイスラエルの近隣諸国(全てNPT加盟国)は、事実上、NPT未加盟のイスラエルがあたかもNPT上の核保有国であるかのごとく同国の核兵器と共存していくことを期待されてきた。これは安全保障の如何なる常識に照らしてもあり得ない処方箋であり、結局このような無責任なレトリックが、中東やその他の地域で核拡散を引き起こす要因を作り出してしまっているのだ。


他方、核に関する新しいストーリーは、イスラエルも含めた中東のすべての国家の幸福に関わるものだ。核兵器を含む全ての大量破壊兵器のない地域を創設する構想は、初めからシナリオの一要素として存在していた。またこの地域での1990年代の動きは、微妙な安全保障問題の解決に向けて、インセンティブや互恵主義、相互関与を通じて取り組んだ有益な前例を示している。


第三に北大西洋条約機構(NATO)であるが、その核兵器は使えないもので、金の無駄遣いとなっている。NATOの約200発にのぼる戦術核は、冷戦期の老朽化した怪物が依然として貯蔵庫で幅を利かし、それには何の意味もないということの象徴となっている。この死の遺産をなくすることで、核兵器を自国領土に置いている国を14か国から9カ国に減らすことができる。またそうした措置は、NATO・ロシア間の新しい安全保障取り決めに向けた大きな障害を取り除くことにもなる。


2010年、NATOとロシアは、「欧州・大西洋地域において、平和・安全保障・安定の共通空間創出に貢献する」ことに合意した。はたして今年シカゴで開催予定の「NATOサミット2012」で出てくるのは、新しいストーリーだろうか、それとも古いストーリーだろうか。


核の新しいストーリーでは、過去を理解するために核の考古学者が登場し、一方で「人間の安全保障」という枠組みが、未来のビジョンとして提案されている。北東アジア、中東、そしてNATO加盟諸国が位置する場所は、いずれも今後の「鍵を握る」地域である。核廃絶を目指す取り組みは引き続き困難で、さらに多くの人々の参加が求められるが、変化の予兆はすでに現れている。私たちは今後の取り組み次第では、新年を核時代という過去の延長ではなく、より安全な未来の一部として迎えることが可能なのである。(2012) IPS Japan


ジョナサン・フレリックス氏は、世界教会協議会(WCC)の平和構築、軍縮エグゼクティブ。

 

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