核兵器廃絶のための「連帯」と「意志」(寺崎広嗣創価学会インタナショナル平和運動局長)

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【IDN-InDepth News Viewpoint】

去る11月26日、国際赤十字・赤新月運動の代表者会議において、核兵器廃絶に関する決議案が採択された。これは、核兵器廃絶のために取り組む市民社会を勇気づける出来事であった。SGIとしても、赤十字・赤新月運動の決議に、心からの敬意と歓迎の意を表したい。 

1945年に広島に原爆が投下されて以来、国際赤十字・赤新月運動が、核兵器の廃絶のために多大な尽力をされてきたことは広く知られた事実である。近年では、2010年4月の赤十字国際委員会のヤコブ・ケレンベルガー総裁のジュネーブ外交官団への声明と、2010年11月広島でのノーベル平和賞受賞者サミットでの国際赤十字・赤新月社連盟の近衛忠煇会長による声明はともに、核兵器廃絶への強い意思を表明するものであった。

連帯の創造

このように、国際赤十字・赤新月運動のような人道分野の団体、さらに人権や持続可能な開発など、軍縮分野の団体に限らず様々な分野の市民社会団体が、核兵器の廃絶に関わることは、核兵器のない世界を求める運動の裾野を広げるものだ。

残念ながら国家間の協議には、国益を超えることが難しいという、本質的な限界がある。しかしいうまでもなく、私たちは、ますます相互に依存する世界に生活するようになっている。その意味で、視界をさらに広くし、国益の先の地球益を考えて生きていくことが必要である。

また、貧困や失業、疾病との絶え間ない戦いにおいては、生命の尊厳が最大限に尊重されるよう、国家という枠よりさらに視界を小さく絞り、一人ひとりの現実生活を見据えた「人間の安全保障」を考えていくことも重要である。

このように、国家の視点だけではカバーできない多様な観点を生かすためには、軍縮分野を超えて、人道、人権、持続可能な開発など、それぞれの分野において、様々な強みをもつ多くの人々や団体が一層連帯を強める必要がある。

仏教徒のネットワークであるSGIは、50年以上にわたり、核兵器廃絶への活動を続けてきた。仏教は本来、あらゆる関係性の中で自分自身が存在しているという縁起の思想を重要な要素とする。その思想を現実の生活の中で展開する形で、SGIは「他人の不幸の上に自らの幸福を築くことは出来ない、また築くべきではない」という現実認識に基づき、その圧倒的な破壊力で他者を抹殺せんとする核兵器を“絶対悪”として鋭く批判してきた。核廃絶運動の裾野の拡大という意味では、 “人間としての責務”という明確な倫理規範をもち、現実の生活に信仰の基盤を置くSGIのようなFBOが果たす役割は、独自の強みを持っていると思う。

民主主義政治への脅威

核兵器は、1945年に広島、長崎に投下されたのち、その破壊力ゆえに「最後に使われる兵器(最終兵器)」としてみなされた。世界が冷戦期に入ると、その非人道性ゆえに実際には、「使うことは困難な兵器」となったが、一方で、国家間の核軍拡競争は加速し、核兵器は主に「抑止力」としての価値を持つようになった。核兵器は実質的に「使われない兵器」と化したが、核兵器の維持と開発は、抑止力を持ち、外交交渉のカードとなった。


しかし、冷戦後は、こうした核兵器の性質にも、大きな変化がみられるようになった。それは、核技術の拡散により、今や核兵器がテロの手段として、再び「使われるかもしれない兵器」となっているということだ。恐怖の均衡の上に成り立つ核抑止論も、テロを抑止することはできない。テロが無差別性をはらんでいる以上、その危険は、同じ地球上に生きる全ての人々に関わるものだ。ひとたび核兵器が使用されれば、その結果がいかなるものであるかは、広島と長崎の“苦い経験”が示している。

こうした新しい事態が生じつつあるという認識を、市民社会が共有する必要がある。誰もが犠牲者になる可能性をはらんでいる以上、核兵器の使用という事態を絶対に引き起こしてはいけないとの意識に、一人ひとりが目覚める必要がある。その意識を共有し続け、国際的な世論を形成することでしか、民主主義のプロセスを進展させることは困難であろう。

なぜなら、核兵器は、人道、人権、持続可能な開発といった、人類の未来に重要な基本的な価値を真っ向から否定するものだからだ。民主主義の価値を声高に訴えるならば、核兵器に依存する国益のための安全保障という構造的な“ゆがみ”を正すことに、何よりも最優先で取り組むべきだと思う。

こうした問題意識のもとで、SGIは、2007年より「核兵器廃絶のための民衆行動の10年」のキャンペーンを新たに展開してきた。

現在SGIは、カリブ海・ラテンアメリカ地域における核兵器禁止条約(トラテロルコ条約)の履行検証機関であるOPANALと共に、非核兵器地帯とその未来に関する国際会議の準備を進めている。2月に開催されるこの会議の成果は、IAEAが昨年11月に行ったフォーラムに続き、2012年に開催が予定されている中東非核会議の実現と成功に、何らかの貢献が出来ることを期待するものだ。

また、核時代に終止符を打つ意義を込めて、「核廃絶サミット」を2015年に広島・長崎で開催を、との池田SGI会長の提言を踏まえ、その実現に向けて、本年についても引き続き関係当局・諸団体と連携し取り組んでいきたいと考えている。

それと並行して、核兵器による悲劇は二度と繰り返されてはならないという、すでに世界の民衆の中に息づく規範意識をより明確な形で結集し、CTBTの早期発効、核兵器禁止条約の実現に向けSGIとして全力で貢献して参りたい。

その意味において、昨年12月インドネシア国会がCTBTの批准を承認したことは、CTBTの発効に大きな力を与えるものだ。

人間の安全保障への転換

核兵器を無くせるか、無くせないかという議論をしている段階は、すでに過ぎ去った。かつての核抑止論者であるキッシンジャー元米国務長官ら元高官4人も、「核によるテロや核拡散を防ぐには“核兵器をなくすしかない”」と結論付けている。

私たち市民社会は、核兵器のはらむ問題とその危機の現状を正しく認識し、その問題の解決と危機の回避のためにどうすべきか、その明確な意志を集約し「声」として大きく発信すべき時であるとの強い自覚が問われている。

池田SGI会長は、「21世紀の真の安全保障を考えるにあたり、私どもは変わりゆく現実を直視し、それを望ましい方向へと導くべく、さらに新しい現実を生み出す想像力を持たねばなりません。軍事力による『国家の安全保障』から『人間の安全保障』へ――この発想の転換のカギを握るのは、そうした「想像力」に裏打ちされた「創造力」であります」と指摘している。

その意味において、核兵器廃絶に向けての取り組みを強化するとの決意を含んだ決議を今回赤十字・赤新月運動が示されたことは、新しい現実を生み出すために日夜取り組んでいる市民社会にとって、大きな希望の光である。(01.03.2012) IPS Japan/IDN-InDepthNews

 

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