Red Cross Movement Wants Nukes Abolished - JAPANESE

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核兵器廃絶を目指す赤十字

【シドニーIDN=ニーナ・バンダリ】

オーストラリアの与党・労働党は12月はじめ、これまでの党の方針を翻して、インド・パキスタンに対するウラン売却を認めた。そうしたなか、国際赤十字・赤新月運動が、法的拘束力のある核兵器廃絶条約を求める決議を採択し、世界の核軍縮運動は勢いづいている。

オーストラリア赤十字社(ARC)は、日本、ノルウェーの赤十字社と協力して2011年初めに決議草案を作成し、11月26日にジュネーブで採択された。決議を採択したのは、赤十字国際委員会(ICRC)、187ヶ国の赤十字・赤新月社、赤十字・赤新月社国際連盟からなる、運動代表者会議である。

ARC国際法・原則部門の責任者、ヘレン・ダーラム博士は、IDNの取材に対して、「イランやヨルダン、レバノンから、モザンビーク、マレーシア、サモアといった多様な国々の仲間たちによって、この恐るべき兵器を二度と使うべきでないという決議が共同提出され支持されたことは、非常に感動的です。この決議は(世界の世論を)引っ張っていくものであり、核廃絶というこの重要な問題について赤十字運動が発言すべきだとの世界の感覚を示したものなのです。」と語った。

この歴史的な決議は、世界のすべての国に対して、「法的拘束力を持つ国際条約によって、核兵器の使用禁止と完全廃棄を目指す、誠実かつ緊急で断固たる交渉を追求」することを訴えている。

2010年5月にニューヨークで開かれた核不拡散条約(NPT)運用検討会議においては、これまでで最大の数の国が、核兵器禁止条約(NWC)採択に向けた交渉を始めることを求めた。

今回の決議は非常に重要な意義を持つ。なぜなら、戦争の兵器として使用された核兵器の正当性を、それが人間、とりわけ民間人に与える破滅的な影響や、環境と世界の食料生産に与える脅威ゆえに、疑っているからである。

人道上の要請

「世界がより集中的に核軍縮に取り組むべき、法律上、人道上の要請があります。ますます多くの国に核兵器が拡散し、他の集団が核兵器を使用する能力を獲得する脅威は、国際社会に対する警鐘として認識されるべきです。赤十字は、このメッセージを、各国や世界の人びとに伝えていきたい。」とダーラム氏は語った。

「広島の日」の2011年8月6日、ARCは、核兵器使用を違法化する「核兵器をターゲットに」キャンペーンを開始した。1960年代から70年代にかけての時代を特徴づけた大義をベビーブーマーの世代とつなぐことを目指し、すべての新しい世代に参加を呼びかけている。キャンペーンには56万5000人の参加があり、フェイスブックやツイッターを通じて広まった。

今日、世界には少なくとも2万発の核兵器があり、そのうち3000発は、即時発射可能な状態にある。これらの潜在的破壊力は、広島型原発15万発分にも及ぶ。

ARCのロバート・ティックナー代表は「もし地雷やクラスター弾を制限する条約が作れるのならば、この邪悪な核兵器を永遠に違法化する国際条約に関する合意を得る必要性に背を向けることはできないはずだ。」と語った。ARCは、NWCにオーストラリアで超党派の支持を得る取り組みを続けている。

1945年以来、赤十字・赤新月運動は、大量破壊兵器に対して深い懸念を表明し、これら兵器の使用禁止の必要性を訴えてきた。国際人道法発展における赤十字の役割は大きく、1977年には、ジュネーブ条約追加議定書の採択につながった。オーストラリアを含めた194ヶ国が4つのジュネーブ条約を批准している。

反核、しかし米国とウランはどうなる

オーストラリアは核保有国ではないが、米国との間に防衛上の取り決めがあり、米国の核兵器による保護が、オーストラリアの安全保障にとって鍵を握ると考えられている。また同国には、世界のウラン埋蔵量の40%が眠っており、世界のウラン供給の19%を占めている。

オーストラリア政府は、ウラン輸出に関して、現在の年間1万トンから、2014年には17億豪州ドルに相当する1.4万トンに拡大すると予想している。現在は、中国、日本、台湾、米国に輸出している。

国際核兵器廃絶キャンペーン(ICAN)豪州支部のティルマン・ラフ議長は、IDNの取材に対して、「ICANは兵器や拡散といった問題に焦点を当てていますが、明らかに原子力とのつながりがあります。初発の物質と基本的なプロセスが同じだからです。原子力発電用に原子炉級のウラン濃縮をできる国なら、もう少し濃縮して兵器級にする技術を持っているということになります。だからこそ、イランの核開発に対する懸念が広がっているわけです。そして、原子炉を保有するどの国でも、使用済み燃料からプルトニウムを抽出して、それを核兵器製造のために使うことができるのです。」と語った。

「原子力発電に関するICANの主な役割は、初発の物質が同じであり、それが原子炉によるものであろうが核爆弾によるものであろうが、被ばくの影響は無差別的かつ同じように起こるという事実に目を向けさせ、原発に関してもこれまでと同じようにやっていくのは不可能だということを示すことです。ウランを濃縮したり使用済み核燃料からプルトニウムを抽出したりする国家に何の制約もかけないまま、核兵器を廃絶することは不可能なのです。」

「核兵器なき世界」を目指す人びとは、たとえ受領国に保障措置をかけたところで、すべてのウラン輸出にはやはり問題がある、と考えてきた。なぜなら、それが兵器に使われる危険性は消えないからだ。仮に兵器に使われなかったとしても、国内産出のウランを兵器用に回す余裕を作り出してしまう。

独立の研究機関「ワールドウォッチ研究所」(ワシントンDC)による新しい分析では、原子力発電の高コスト体質、原発への低い需要、天然ガス価格の低下、福島原発事故以降高まった健康や安全への懸念などから、他のエネルギー源に目が向けられているという。

同研究所の最新報告書「重要な兆候(Vital Signs)」によれば、世界の原子力発電所全体の潜在的発電量は2010年にピークの375.5ギガワットに達したが、2011年には366.5ギガワットと減少したという。

ジュリア・ギラード首相によるインドへのウラン輸出動議に関して、国会で熱い議論が戦わされ、9人の議員が反対演説を行ってスタンディング・オベーションを受け、7人の議員が賛成演説を行って、ウラン採掘・輸出に反対する人たちから野次を受けた。

これまでのところ、労働党は、NPT署名国にだけウラン輸出を認めてきている。首相の動議は、わずか21票差(賛成206、反対185)で承認されたが、ジラード政権内部にも強い異論があることが明らかになった。

アントニー・アルバニーズ運輸・インフラ相は、12月4日、第46回労働党総会において、「核拡散と核のゴミの問題を解決するまでは、核燃料サイクルにさらに関わるために、我々の政策を変えるべきではない。」と述べた。

(世界全体では)2010年に16基の原子炉建設が始まったが、2011年にはインドとパキスタンが各1基の計2基にまで縮小した。こうした建設ペースの鈍化に加えて、2011年中には10月までに13基が稼働停止し、世界で稼働中の原発は年初の441基から433基に減少した(「重要な兆候」報告による)。

2010年以来、中国、インド、イラン、パキスタン、ロシア、韓国が、合計で5ギガワット分の新規建設を開始している。他方で、フランス、ドイツ、日本、英国で、11.5ギガワット分の原子炉の閉鎖があった。

核兵器禁止の包括的な基礎を築く条約づくりを目指した赤十字・赤新月社の決議は、緊急性を持って、すべての諸国によって実行されなくてはならない。(12.10.2011)

IPS Japan/IDN-InDepthNews

 

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