Saudi Warning Could Escalate Nuclear Arms Race - JAPANESE

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|中東|サウジの警告は核競争の危機を拡大しかねない

【国連IPS=タリフ・ディーン】

世界の核兵器保有国は、-公式、非公式を問わずに見れば-主にアジア(中国、インド、パキスタン、そしておそらく北朝鮮)に位置している。

中東では、核兵器保有を明かさないイスラエルが、事実上唯一の核兵器保有国として優位を確保してきた。

しかしこうしたイスラエルの優位も、西側欧米諸国が核兵器開発寸前にあると主張しているイランに脅かされている。なお、イランは核兵器開発疑惑を一貫して否定している。

そして今、イスラエル及びイランからの核の脅威は、域内の潜在的なライバルであるサウジアラビアの核武装を誘発しかねない事態にまで至った。同国は中東屈指の産油国で、核兵器能力さえその豊富な財力で買収が可能である。

トゥルキ・ファイサル王子(元駐米サウジアラビア大使)は、先週サウジアラビアの首都リヤドで開催された安全保障フォーラムにおいて、「イスラエルとイランからの核の脅威に晒されている今日の状況が続くようならば、サウジアラビアも、やむなく両国に倣らざるを得ない(=核武装する)かもしれない。」と警告した。

報道によると、トゥルキ王子は、「核兵器の保有を含む全てのオプションを検討することが国家と国民に対する我々の義務なのです。」と語ったという。

トゥルキ王子の発言は、長らく懸案であった中東非核地帯に関する国際会議が来年フィンランドで開催されるという背景に照らして考えると、ますます重みのあるものとなっている。

核不拡散条約(NPT)において公式に認定されている核兵器5大国は、同時に拒否権を有する国連安全保障理事会の常任理事国(米国、英国、フランス、ロシア、中国)でもある。

「科学と世界の諸問題に関するパグウォッシュ会議」のジャヤンタ・ダナパラ会長は、IPSの取材に対し、「『核兵器なき世界』に向かうべきという考えが世界世論の大勢を占めている中で、他国の核武装を理由にNPTからの脱退と核武装を仄めかして威嚇している(サウジアラビアの)姿勢は、時代に逆行するというのみならず、粗野で、国際人道法の原理や全ての宗教の教義にも反するものです。」と語った。

「私たちは、核抑止論とは誤ったドクトリンであり、いかなる国が核兵器を保有しても他国より安全になることはないことを知っています。」とダナパラ氏は指摘した。

核軍縮・不拡散アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク(APLN)は、11月10日~12日に東京で第1回会合を開催した際に発表したステートメントの中で、「核兵器を保有する者がある限り、必ず他にも保有を望むものがでてくる。同じく、どこかに核兵器が存在する限り、いつの日か必ず、国家や非政府主体によって、意図的に或いはミスや誤算で使用されるはずである。そしてその影響は、破滅的なものになるだろう。」と述べている。

「潘基文国連事務総長による核軍縮のための5項目の提案と核兵器禁止条約の交渉だけが、世界から史上最も非人間的な兵器をなくすために前進できる唯一の実行可能な方策です。」と元国連軍縮担当事務次官のダナパラ氏は語った。

エルサレムに拠点を置く『パレスチナ・イスラエル・ジャーナル 』誌のヒレル・シェンカー編集長はIPSの取材に応じ、「トゥルキ王子が、中東における軍拡競争を背景に照らし合わせてサウジアラビアの核武装の可能性に言及したとの報道を読んでも驚くには値しません。」と語った。

また中東安全保障協力会議の中東安全保障グループコーディネーターでもあるシェンカー氏は、「イスラエルが中東における実質唯一の核兵器保有国で『中東に核兵器を導入する最初の国にはならない』と宣言しているうちは、中東の非通常兵器・戦略の分野において、ある種の不安定な静けさがありました。しかし、イランが似たような核兵器能力を取得するならば、たとえその手法がイスラエルの曖昧政策を踏襲したものであったとしても、中東の安定を著しく揺るがす核軍拡競争が勃発するのは不可避であり、それが潜在的にもたらす破滅的な影響は中東地域という枠を遥かに超えるものとなるでしょう。」と語った。

「この状況を鑑みれば、2012年にフィンランド政府がホストして開催予定の中東非大量破壊兵器地帯に関する国連会議の位置づけがますます重要なものとなります。」とシェンカー氏は付加えた。

「できれば2012年国連会議が英知と先見性を持って計画され、そこから、中東非大量破壊兵器地帯の創設と、イスラエル-パレスチナ及びイスラエル-アラブ諸国間の包括的な和平へとつながるプロセスが生まれることを願っています。」とシェンカー氏は強調した。

グローバル安全保障研究所(GSI)のジョナサン・グラノフ所長は、「中東で核拡散を巡る緊張が高まっている背景には、『普遍的で法的強制力があり、無差別に適用される核兵器禁止を達成する』という、早急に世界共通の目標にしなければならない課題に対して、十分な関心が注がれていないという現実があります。」と語った。

「核不拡散体制下の検証強化には非協力的でありながら尊敬を求めるイランの動きや、サウジアラビアが示した(核武装という)新たな脅迫、或いはイスラエルの核兵器が有する実際の危険性といった問題が、私たちが今日直面している到底受け入れられないほど不安定な『核のジレンマ』の本質的な原因ではないのです。」「(世界の核兵器の93%を保有する)ロシアと米国が核の脅しによる応酬を繰り広げる限り、中東の核問題は、私たちの頭上に存在し続けるでしょう。」と、核不拡散全米弁護士協会軍備管理・安全保障委員会上級顧問でもあるグラノフ氏は語った。

「私たちは核兵器の悪夢から目をさまし、新たなレベルの共通目標と法に基づいた協力が、全ての人々の安全な将来のために不可欠だという現実を悟らなければなりません。」とグラノフ氏は語った。

スウェーデンの軍備管理・軍縮に関する独立シンクタンク「ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)」で核問題プロジェクトを担当するシャノン・カイル上席研究員は、トゥルキ王子がサウジアラビアの将来における核武装オプションに言及した点について、「まずなによりも、王子のコメントは、なかなか解決を見ないイランの核兵器開発疑惑に対して高まっているサウジアラビア政府の懸念を表明したものと解釈すべきです。」と語った。

「また王子のコメントは、(中東で唯一)核兵器を保有していると広く考えられているイスラエルが、中東非大量破壊兵器地帯の創設に関する協議に応じようとしないことに対して多くのアラブ諸国の間で不満が高まっている現状を反映したものですあります。」

「トゥルキ王子は、決してサウジアラビアが核兵器開発計画を推進する意向だと言ったわけではありません。王子のコメントは、イラン核開発計画の性格と範囲に関する未解決の問題を早急に解決するとともに、中東非大量破壊兵器地帯に関する2012年国連会議において議論を確実に前進させる処方箋を見つけ出す緊急の必要性を示しているのです。」とカイル氏は語った。

「そうでなければ、サウジアラビアやその他のアラブ諸国の間から、1968年当時に非核兵器国としてNPTに加盟した自らの安全保障上の選択について、再検討をせざるを得ないという考えが浮上する可能性があります。」とカイル氏は警告した。(IPS/12.09.2011)

 

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