U.S. Nuclear Arsenal Holds Fast to Status Quo - Japanese

AddThis

|軍縮|現状に固執する米国の核兵器政策

【国連IPS=ハイダー・リツヴィ】

バラク・オバマ大統領は核軍縮と世界の平和のために努力すると繰り返し強調しているが、米国は今後も長年に亘って膨大な数の核兵器を維持しつづけることになるだろう、と核不拡散問題の専門家らは見ている。

「オバマ大統領の主張は非常に明確です。ただし、大統領が今後もどの程度そうあるのかについてはわかりません。」と、米国の核政策を倫理的な観点から監視し続ける政策シンクタンク「米科学者連盟」(FAS)のハンス・M・クリステンセン核情報プロジェクトディレクターは語った。

クリステンセン氏と同僚のロバート・ノリス氏は、先週FASのために用意した報告書の中で、「オバマ大統領は、軍部と官僚からの協力が得られないために、核軍縮に関する公約を果たすことができないかもしれない。」と警告している。

またクリステンセン氏は同報告書の中で、「現状を維持することに利益を持つ官僚の力によって、オバマ大統領の目標が実現するかどうか危うくなっている。」と記している。

クリステンセン、ノリス両氏は、核兵器の大幅な削減と最終的には核廃絶を可能とするような新しい道筋に米国を乗せるためには、「思い切った方向転換(radical break)」が必要だと考えている。両氏は、そうした方向転換を成し遂げるには、(ケネディ・ジョンソン政権以来の)「対兵力(counterforce)」ドクトリン(敵の核兵器、軍事施設、戦争遂行能力を排除することに主眼を置く戦略標準ドクトリン。ただし敵からの先制攻撃を受けた後では軍事拠点への攻撃の意味がないことから、このドクトリンは先制攻撃への誘因を高めるとの批判がある:IPSJ)を放棄しなければならないと主張している。

現在、米国とロシアが世界最大の核兵器保有国である。世界の兵器生産と輸出に関する情報を集めているスウェーデンのシンクタンク「ストックホルム国際平和研究所」によれば、両国で世界の全核兵器の93%を保有している。

これに加えて、中国が400発、フランスが348発、イスラエルとイギリスが200発ずつを保有している。インドは80発以上、パキスタンは約40発を保有していると考えられている。また「核クラブ」のいちばん新しいメンバーである北朝鮮について、同研究所は、「小型の」核兵器を多くとも10発程度しか保有していないだろうと分析している。

多くの批評家は、米国が核不拡散条約(NPT)の下での義務を果たしていないだけではなく、過去において核軍縮に向かう世界の気運を阻害してきたことから、「核クラブ」のメンバーの中で最も無責任な国であるとみなしている。

たとえば、ロナルド・レーガン政権(1981~89)は、パキスタンが1980年代に違法な核開発に手を染めたとき、それを黙認する態度をとった。同様に、ジョージ・W・ブッシュ政権(2001~09)は、NPTに加盟していないインドと原子力取引を結ぶことを決めた。

オバマ政権は戦略核兵器に関する新条約をロシアと結んだ。しかし、この条約の下では、2020年以降ですら少なくとも3500発の核兵器を保有することが認められている。しかし、核軍縮を主唱する人びとが当時評したように、十分ではないがそれは正しい方向への一ステップではあった。

FASの研究者らによれば、より一般的な政策的概念が米国の各省庁の中で現在議論されており、「いつ、どのようにして特定の目標を攻撃するのかについて軍に指示する、十分に練られた攻撃計画」にまとめ上げられることになる、という。

クリステンセン氏とノリス氏によると、その結果は「よく統合された戦争計画」である。

FAS報告は、オバマ政権の「核態勢見直し(Nuclear Posture Review)」がさまざまなレベルで実行されており、それは市民の目には見えていない、としている。「結果次第によっては、相当多くのことが実行されうる」と報告書は指摘している。

オバマ政権の核軍縮政策には5つの主要目標がある。すなわち、核不拡散・核テロの防止、核兵器の役割の低減、戦略的抑止力の維持、地域同盟の強化、安全に防護された効果的な核戦力の維持である。

「オバマ大統領は、こうした目標を推進するために、敵の重要なインフラを破壊することに焦点を当てた新たな核抑止計画に関する大統領政策指令(Presidential Policy Directive)を出すべきです。」とクリステンセン氏は語った。

「現状では大統領の指示はきわめて一般的なもので、いくつかの基礎的な原則を提示したものにすぎません。つまりそれをどう解釈するかは、米軍当局次第なのです。しかも、現在核戦略に携わる関係者の中には、考え方が依然として冷戦時代のままの人たちがいるという現実も見逃せません。彼らの考え方を変えるのは大変困難なことです。」とクリステンセン氏はIPSの取材に応じて語った。

長年に亘って平和活動に従事し、核時代平和財団の代表を務めるデイビッド・クリーガー氏は、このFASの分析を受けて、「最小抑止は、それがもし米国の核弾頭数を20とか30に減らすことを意味するのであれば、重要な前進となるでしょう。」と語った。

しかしクリーガー氏は、最小抑止力の維持に関して、「対兵力目標選定counterforce targeting」ドクトリンを放棄することには意味があるが、それだけではまったく十分でないと見ている。その理由としてクリーガー氏は、たとえ核兵器保有量を「最少抑止力」に限定することで、核兵器が使用された場合の被害を多少なりとも減らすことが可能かもしれないが、そもそも効果が疑問視される「抑止論」に依存している現実に違いはないから、と指摘している。

クリーガー氏は「核抑止理論は著しく道徳に反するものであり、安全保障をそれに委ねることはできません。『対兵力目標選定』ドクトリンへの依存を放棄する際には、核兵器の『先制不使用』、核の発射準備態勢の解除(警戒外し)、そして核兵器禁止条約(NWC)に関する誠実な交渉を開始するという3つの確固たる公約も同時に行うべきなのです。」と語った。

クリステンセン、ノリス両氏がオバマ大統領のために準備しているペーパーの草案では、「核兵器の究極的な廃絶」を謳っているNPT第6条にも言及している。

「実際、NPT第6条は、早期に核軍拡競争をやめて核軍縮へと向かう誠実な交渉を行うよう求めています。米国はそこで謳われている核廃絶を『究極的な(eventual)』目標とみなしてきましたが、その実は『決して実現しない(never)』目標という意味合いの婉曲表現なのかもしれません。」

「オバマ大統領は核兵器の近代化を推し進める意図を明確にしていますが、これではたとえ低いレベルであっても、核軍拡競争は今後も継続されていくことになるでしょう。つまり、オバマ大統領が表明した核廃絶という公約が果たされる日は、きわめて遠い将来のことで、私が生きている間には実現しそうにありません。」とクリーガー氏は語った。

一方クリステンセン氏は、核兵器の完全廃絶には国際的な協調が不可欠だと強調している。「『抑止』という言葉の意味するところは、人によって解釈が異なっており、どの核兵器保有国も、単独で自国の核兵器をゼロにすることはないでしょう。」

さらにクリステンセン氏は、「米国政府が核軍縮を論じている間に、他の核兵器保有国は、自国の安全保障政策における核兵器の役割を低減させなくてはなりません。そうでなければ、核軍縮議論自体が頓挫することになるでしょう。おそらく(核軍縮への国際的機運が高まっている)今が、米国の核政策に影響を及ぼせる唯一で最後のチャンスになるかもしれません。」と語った(08.17.2011 IPS Japan

 

Search