A side event that included discussions on a documentary film premier titled "I Want to Live On: The Untold Stories of the Polygon”. Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.
A side event that included discussions on a documentary film premier titled "I Want to Live On: The Untold Stories of the Polygon”. Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.

核実験被害者の声

【国連IDN=タリフ・ディーン】

1週間に及ぶ核兵器禁止条約締約国会議の間に開かれたあるサイドイベントで、創価学会インタナショナル(SGI)の寺崎広嗣平和運動総局長は、過去2カ月間、イスラエルとガザ地区との間で大規模な暴力が発生し、ウクライナでも紛争が続いていることから、「核兵器が実際に使用される危険性 」が高まっていると警告した。

こうした状況にもかかわらず、NPT再検討会議では最終声明が採択されず、2026年NPT再検討会議第1回準備委員会会合では「議長要旨」を出すことすら初めてできなかった。

さらに11月には、ロシア政府が包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を撤回する決定を発表し、核軍縮の大義にとって深刻な後退となったと指摘した。

こうした現実が、12月1日に閉幕するTPNW第2回締約国会議の開催をより重要なものにしており、核軍縮・廃絶の機運を再び盛り上げる重要な機会となっている。

核禁条約の前文は「核兵器の使用による被害者(ヒバクシャ)が受けた又はこれらの者に対してもたらされた容認し難い苦しみ及び害並びに核兵器の実験により影響を受けた者の容認し難い苦しみに留意し、」と述べている。

このサイドイベントでは、「私は生きぬく:語られざるセミパラチンスク」と題するドキュメンタリーの先行上映会も開かれた。「国際安全保障政策センター」(CISP、カザフスタン)、創価学会インタナショナル(SGI、日本)、カザフスタン共和国国連代表部、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が共催した。

ドキュメンタリーは、セミパラチンスク核実験場の被害者第三世代であるアイゲリム・イェルゲルディに焦点を当てている。

サイドイベントでは、CISPのアリムジャン・アクメートフ代表とカザフスタン政府を代表してアルマン・バイスアノフ外務省国際安全保障局長が発言した。

寺崎総局長は、「カザフスタン政府を代表して登壇されたアルマン・バイスアノフ氏に感謝を申し上げる」とお礼の言葉を述べた。

「2026年NPT再検討会議第1回準備委員会会合に引き続き、カザフスタン政府と国際安全保障政策センターのご支援をいただき、核実験被害者に関するサイドイベントを開くことができた。全ての関係者に感謝を申し上げたい。」

寺崎総局長はまた、「今日は、CIPSが制作しSGIが支援したドキュメンタリー『私は生きぬく:語られざるセミパラチンスク』の初上映となる。核実験被害者の声を記録し、核兵器の非人道性と愚かさを強力かつ効果的に伝えるものとなっている」と述べた。

「かつてセミパラチンスクとして知られていた核実験場の、荒涼とした広大さを見渡したことを覚えている。そこで引き起こされた恐るべき被害を直接に聞いた衝撃は、私自身ずっと忘れることがないだろう。」と寺崎総局長は語った。

核兵器をめぐる議論はえてして、核抑止論を初めとして、抽象的な政治的性格を帯びたものになりがちだ。

「このドキュメンタリーは、核兵器がもたらす脅威と被害の実相を伝えるものであり、人々の生きた現実と経験に焦点を戻すのに役立つと思います。そのため、私はこのドキュメンタリーが貴重な教育ツールになると確信している。」

「核兵器のない世界」への道はいばらの道であるからこそ、核兵器が人類社会に必要であるとか、安全で安心な社会を築くための基礎になるなどという現在の思い込みに異議を唱えるために、世界中の人々が声を上げることが重要だ、と寺崎総局長は主張した。

寺崎総局長は、SGIはグローバル・ヒバクシャの苦しみについて一般への啓蒙活動を続け、TPNW第6条と第7条で求められている被害者支援と環境修復を推進していく。今回の発表で伝えられた人々の真の声はこの取り組みにおいてきわめて重要な価値を持つ、と指摘した。

「核兵器の脅威と、それが引き起こす非人道的な被害について一般の人々に情報を提供し続け、核軍縮へと世界の流れを変えるよう、本日ご出席の皆様に呼びかけたいと思います。」。(11.30.2023) INPS Japan/ IDN-InDepthNews