|軍縮|国連、原子力安全に関する世界サミット開催へ

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【国連IPS=タリフ・ディーン】

深刻な事態に陥っている福島第一原発の事故を受けて、9月の国連総会開催に合わせて、政治的に高度の慎重を要する問題―原子力の安全(nuclear safety)―に関するハイレベル会合を国連の潘基文事務総長が計画している。

潘事務総長は、5月11日記者団に対し、「私たちは日本が経験した災害を教訓に、核のリスクと原子力安全に関する再評価を行わなければなければなりません。」と語った。

国連総会会期中の9月22日に開催が予定されているハイレベル会合では、世界的な原子力安全管理体制の強化と最高水準の原子力安全基準の確保について協議されることになっている。

また潘事務総長は「(原子力安全のためには)設計、建設、訓練、品質確保体制、厳格な規制メカニズムなどが必要とされます。また、原子力のコスト・リスク・利益に関する評価や、原子力安全、核保安、核不拡散の相互関連など、より幅広い課題についても真剣な世界的な議論が必要です。」と語った。

福島第一原発は、今年3月に勃発した大地震とそれに続いた津波による損傷が原因で、生命を脅かす放射性物質が外界に漏えいしたことから、周辺住民の大量移転という事態に発展した。

前回の大規模な原発事故は1986年に発生したチェルノブイリ事故で、大気中に放出された放射性物質は、最も深刻な影響を受けたベラルーシ、ウクライナ、ロシアをはじめ欧州数カ国に大災害をもたらした。

国連は福島第一原発事故をチェルノブイリ事故と同レベルの大災害と認定している。

核政策に関する法律家委員会(LCNP)のジョン・バローズ代表は、ハイレベル会合は核軍縮に向けた世界的な運動を後押しすることになるかとの質問に対して、「核軍縮の問題は、少なくとも原子力安全を協議する9月のハイレベル会合における暗黙の議題となるでしょう。」とIPSの取材に応じて語った。

バローズ氏は、「ハイレベル会合は、福島第一原発タイプの原子炉事故の再発防止を目指すと共に、原子力安全の確保と、非国家の過激派組織による核兵器製造を目的とした核分裂性物質の取得を防止するための方策が協議されるでしょう。」と語った。

またバローズ氏は、「ごく一部の国だけが核兵器や国内で完結した核燃料生産施設をもつことを許されるという二重システムがある中で、原子力安全や核保安に関してより厳しい基準を課せられることに多くの非核国は反発しています。もちろん、福島やチェルノブイリのような事故はどの国も経験したくはないから原子力安全を強化することに反対はないだろうが、差別的なシステムがある限り、国際的な規制強化は難しいでしょう。」とバローズ氏は語った。


「核兵器なき世界の実現は私の最優先課題の一つ」と一貫して主張してきた潘国連事務総長は、福島第一原発事故の意味合いに関する国連諸機関を挙げての研究が必要だとの見方を示している。またそこでは、国際社会がまずます顕在化しつつある自然災害と原子力安全の関連性に関する理解を深め、対処していくための研究もなされる予定である。

潘国連事務総長は、「9月のハイレベル会合は、福島第一原発の事故を受けて原子力安全対策を検討する国際原子力機関(IAEA)閣僚級会合(ウィーンで6月下旬開催予定)の内容を踏まえたものになるとともに、来年ソウルでの開催が予定されている2回目の核安全保障サミットにつながるものとなるだろう。」と語った。

また潘国連事務総長は、2011年は「原子力安全保安に関するモスクワ宣言」から15周年にあたると指摘した。原子力安全モスクワ・サミットは、チェルノブイリ原発事故10周年にあたる1996年4月に開催された。

「チェルノブイリ原発事故から25年、そして今回の福島第一原発事故を受けて、私たちは原子力の安全と保安を強化する課題に真剣に向き合う時にきている。」と潘国連事務総長は、5月11日記者団に対して語った。

プリンストン大学のM.V.ラマナ准研究員は、核保安と核軍縮の関係について問われ、「核保安、つまり、核分裂性物質が盗まれないようにすることだけを強調しても、核軍縮にはつながらないでしょう。必要なのは、無差別に核軍縮が進められることです。」と語った。

「しかし、そうした軍縮プロセスも、原発施設の建設が大規模に実施されれば、阻害される可能性が高い。私見だが、原子力の安全と保安はかなり違ったものです。それぞれ大事ではあるが、別々に取り組まれる必要があります。」と、作家でもあるラマナ氏は語った。彼の代表作には「核の夢に囚われた人」「ムンバイ爆破?核兵器の影響と仮定の爆発に基づくケーススタディー」等がある。

さらにラマナ氏は原子力の安全に関して、「IAEAのような組織に加えて、世界各地の核関連の組織とは利害関係のない人々を検証プロセスに参画させていくことが大変重要だと思います。」と語った。

潘国連事務総長は、「私は世界の指導者に対して、核の安全確保は各国政府の責任に依るものだが、改めて自国の安全基準を再検証すべきだと訴えてきました。」と語った。

また潘国連事務総長は、核の安全と保安の関連性についても強調した。

「私たちは核物質や核関連技術が、テロリスト集団や、国際平和・安全保障にコミットしない国等、誤った人物・国家や組織の手に陥ることがないよう、注意深く警戒を行わなくてはなりません。だからこそ、私は真剣にこの問題を採り上げているのです。」と潘国連事務総長は語った。(05.11.2011)

IPS Japan

 

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