│軍縮│橋はバリケードにもなりうる

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【モスクワIPS=ケスター・ケン・クロメガー】

米国との間で新しい戦略兵器削減条約(START)を締結することがメドベージェフ政権の最優先事項であると考えられるが、この協定によって将来のロシアの軍事力が抑制されることになるのではないかという懸念が専門家の間で出てきている。

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と米国のヒラリー・クリントン国務長官は、2011年2月5日、条約の批准式を行った。同条約によって、米露それぞれの戦略核は、現在の上限2200発から1550発まで減らされることになる。

ロシア国会(ドゥーマ)外交安全保障委員会のアレクサンドル・フォメンコ委員は、条約によってロシアの軍事力が弱められるとは考えていない。「戦略兵器は冷戦期に構築されたものであるから、戦略攻撃兵器の削減が今日行われることはおおいに理解できます。今日の真の近代戦は特殊作戦戦争であり、これは新しい現象なのです。」とフォメンコ氏はIPSの取材に応じて語った。

フォメンコ氏はまた、戦略兵器は核兵器の不使用を保証するものでもあり、ロシアは現在、新型ミサイル「トーポリM」と「イスカンダル」、及び他国からの攻撃に反応できるその他の兵器を保有していると述べた。

軍備管理協会(ワシントン)のトム・コリーナ氏は、「新STARTの締結で米露関係は非常に強化され、両国間の信頼が築かれただけではなく、両国の市民はより安全になりました。条約は両国の利益になります。核戦力を減らし、査察を復活し、信頼感を増すことで双方の安全が高まるのです。この成功を基礎として、長距離核だけではなく短距離(戦術)核も対象にした新条約に進むべきです。」と語った。

しかし、ロシアの中にも条約への批判がある。自由民主党のウラジミール・ジリノフスキー党首は、ロシアの軍事力が著しく抑制されることになると主張しているし、共産党のゲンナジー・ジュガーノフ党首は、核戦力を削減すればロシアの安全が危ないと述べている。また、退役将校のレオニド・イワショフ氏は、「新STARTは通常兵器における米国の優勢の問題を扱っていないがゆえに、ロシアにとって甚大な悪影響がある。」としている。

ロシア下院国際問題委員会のコンスタンティン・コサチェフ委員長は、国会の立場を地元メディアにこう説明している。「重要な考え方は、米国が新条約の特定の条項に関してくだす一方的な解釈は、ロシアに新しい義務を課すものではない、ということだ。」

セルゲイ・イワノフ副首相は、「条約は両国の核兵器を相当程度削減することを規定しているが、それぞれの軍隊の戦略的構成要素の開発に影響を与えない。」と指摘したうえで、「条約は、規定された制限を守ること以外に、ロシアにいかなる新しい義務を与えることも想定していない。ロシアは、米国と同じように、将来的に戦略的戦力を開発し続ける権利を持っている。」と語った。

さらにイワノフ副首相は、「この点で、新STARTは双方の戦略攻撃兵器のレベルに制限を課したものではない。軍隊の戦略的構成要素を開発するために策定済みの我々の計画は、完全に生きている」と付け加えた。

つまり、ロシアは、とくに先端的な兵器として、潜水艦に搭載する弾道ミサイル「ブラバ」や(大陸間弾道ミサイルである)「RS-24ヤルス」を開発し続ける、ということである。

ロシア外務省外交アカデミー研究・国際部門のエフゲニー・バザノフ副代表は、「ロシアと西側は接近し、非常に良好な議論を積み重ねてきた。両国間の関係は、他の核兵器保有国、あるいはこれから核を取得しようとする国に対して、米露は軍縮プロセスを推し進めるつもりであり、他国もそれに参加すべきだというメッセージを発することになります。」と語った。

条約は米露関係の改善につながり、両国による協力への機会を提供することになるであろうと見られている。共同のミサイル防衛システム構築という難しい問題も含め、両国間で軍事問題に関するさらなる協議への道を開くであろう、と新STARTの支持者は考えている。

「共同のミサイル防衛に関して何らかの協定があるとすれば、ロシアと米国、NATOは真のパートナーになれるでしょう。そうした協定のひとつの有益な効果は、世界規模での緊張緩和に資するという点にあります。」とバザノフ氏は語った。(03.05.2011)

IPS Japan

 

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