│米国・イラン│非現実的目標で失速する核問題協議

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【ニューヨークIPS=アリ・ガリブ】

 

1月末にイスタンブールで行われた協議は、イランと米国および西欧諸国との間の緊張を解く突破口になるどころか、その入り口にすら届かなかった。この30年間の米国・イラン関係を見てきた者にとっては、驚くに値しないだろう。

 

米国は、国連安全保障理事会常任理事国(米国、ロシア、中国、英国、フランス)とドイツからなる「P5+1」の一部として、イランの核開発に関するこの協議に参加していた。米国および西欧では、イランは核兵器開発を目指していると広く考えられているが、イラン側は単なる平和的な医療・エネルギー目的であると主張している。

 

協議の後半はエジプトでの危機によって影が薄くなってしまったとはいえ、協議で何の動きも生み出せなかったことで、米国の専門家らは、策略に富み頑固なイランをどう取り扱ってよいかわからなくなってしまった。

 

対イラン協議に関する米国の見方は、イランの能力から、米国による提案や期待の内容に至るまで、非現実的な想定ばかりであるという点で、多くの専門家は一致している。

 

ジョージ・ワシントン大学のマーク・リンチ氏は、「交渉の終わりは見えません。私たちの考えるような確固としたものは手に入らないでしょう。現在のオプションの多くが、こうした誤った希望を掲げています。」「問題を解決するはずだとされているオプションのどれ一つとして、実際には機能しないでしょう。単にまた別の戦略的な言葉で置き換えられる程度のことです」と語った。

 

交渉があまりに進展しないので、このままではイランが本当に核兵器開発に向かうのではないかという危惧も出てきている。もしこれが本当なら、イランの核兵器化阻止のために国際社会ができることはほとんどないだろう。

 

ワシントンDCに本拠を置く軍備管理協会(ACA)の不拡散専門家グレッグ・ティールマン氏は、ワシントンで開かれた会議において、「もしイランが核兵器を本気で開発し配備しようとするのならば、万難を排してそうするでしょう。」と語った。

 

米国は、同盟国や国際機関の支援を得て、いわゆる「二重トラック」方式でイランの核開発を阻止しようとしている。この戦略の基本は、核開発放棄に対して利益でもって報いる関与政策と、核開発に対して高い国際的コストを示す懲罰的措置としての制裁の二つである。

 

しかしティールマン氏は、「これらのオプションでイランを核放棄に導けるかもしれないが、もしイランの指導部が本気になったならば、誘惑を無視し、コストを食い尽くし、制裁は無効になるだろう。」と指摘した。

 

またティールマン氏は、「右派が提起し政策サークルで盛んに議論されている軍事攻撃というオプションですら、完全にイランの核開発を止めることはできないだろう。」「一部で主張されている空爆ですら、あくまで核開発の速度を緩めることができるだけで、終わらせることはできません。イランを侵略し占領でもしないかぎり、イランによる核兵器取得の企図を完全に終結させることはできないでしょう。」と語った。

 

さらにティールマン氏は、「イランに『ウラン濃縮停止』を迫るよりも―それは、イランの核開発の進展度に関係なくずっと言われてきた非現実的な目標である―イランの核開発の動きを密に監視することに焦点を移した方がいい。(イランの核開発を監視するのに)必要な透明性の問題に戦略的な焦点を移すべきだ。」と語った。

 

「国家安全保障ネットワーク(NSN)とアメリカの進歩センター(CAP)が共催した同じ会議において、スティムソン・センターのバリー・ブレックマン共同設立者(核軍縮専門特別フェロー)は、「米国の二重トラック政策はバランスが取れていない」と論じた。

 

「米国は政策のバランスを見直す必要がある。この2年間、強制の側面ではよくやっているが、インセンティブを与える方面ももっと強調されるべきだ。」

 

ブレックマン氏は、この問題に関してスティムソン・センターから出た報告書の共著者であるが、同報告書は、米国は核問題を超えてイランとの関与政策を強めるべきだと主張している。ブレックマン氏は「これがもっとも緊急の問題」であるという。

 

またブレックマン氏は、世界中の米国外交官がイランの外交官と『通常の関係』を持つことを認められていないのは『愚か』だと断じ、たとえば麻薬密輸のように、共通の利害のある領域に関して二国間関係を深めることを求めた。そして、「もっと現実的なアプローチ、もっと寛容なアプローチを通じて、外交にチャンスを与えるべきだ。」と語った。

 

実際、イランは制裁によっていくらかはふらついており、中東での影響力拡大には歯止めがかかっている。

 

「イランの覇権強化は、2005年、06年頃とは違っている。」とリンチ氏は同じフォーラムで語った。

 

リンチによれば、イランは最近のアラブ世界での政情不安を利用しようとしているが、それに影響を与えることができずにいるという。「アルジャジーラの視聴者は権威主義体制に対する抗議活動に深いシンパシーを抱いています。アラブの民衆にしてみれば、(2009年のイラン大統領選挙抗議デモ「緑の革命」に際して、イラン政府が国内反体制派を弾圧したことで)イランの中東でのソフトパワーが削がれることになってしまったのです。」

 

イランの中東での影響力が低下する中、インセンティブを与える方がよりイラン指導層に訴えかけるかもしれない。しかし、リンチ氏は、米国は自らの提案の信頼性をより高めるためにより多くのことをせねばならないという。

 

リンチ氏は、対イラン制裁と、レバノンやイスラエル・パレスチナ紛争のような問題に関する米国の立場とを結び付けている米国の法律について言及した。こうした法律の存在のために、イランとの協議において制裁を緩和することが難しくなっているのだという。「もし交渉力を上げようとするのならば、約束はきちんと実行するという確実なシグナルを送れるようにしておかねばならない。」とリンチ氏は語った。(IPS/02.10.2011)

 

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