|軍縮|核実験禁止に向けて大きな前進

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【ウィーンIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

軍事用、民生用と目的を問わずすべての核爆発を違法化する国際法はまだ目の前には見えていないが、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効に向けて大きな前進があったことを喜んでよさそうだ。

 

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会のティボール・トート事務局長は「核兵器の時代を終わらせるというビジョンに導かれた『かなりの成果』を21世紀最初の10年であげることができた。」と語った。

 

このことは、1996年に国連総会で採択されたCTBTの監視システムの認証施設数が2000年にはゼロだったものが現在は263にまで増えていることか らも明らかだろう。10年前には批准国は51ヶ国であった。2010年には、トリニダードトバゴと中央アフリカ共和国が批准し、批准国は10年前の3倍の 153ヶ国にまで増えた。署名国は182ヶ国にものぼる。

 

CTBTOは、この10年間の前進を振り返る中で、新規批准の発表は、2010年のNPT運用検討会議が5月26日に成果をもたらす2日前にニューヨークの国連本部で行われた、と述べた。

 

NPT運用検討会議の前日にインドネシアが批准の意図を明らかにした。さらに同会議中には、イラク、パプアニューギニア、タイ、米国の4ヶ国が批准に向けて動き出すことを明らかにした。

 

NPT運用検討会議が始まると、核実験の歴史とCTBT採択への道を描いた展示会が5月4日から国連本部で開催された。潘基文国連事務総長は「『核爆発に 終止符を打つ』ことは、この展示会の表題以上の意味合いを持っています。それは、国連が長く目標としてきたものの一つなのです。」と語った。

 

CTBTOは年初にウェブに掲示する「昨年のハイライト」の中で、俳優/プロデューサーで国連平和メッセンジャーでもあるマイケル・ダグラス氏が、「我々 の子どもが「この最悪の兵器」の影の下で生きていく理由などない」と展示の開会式で発言したことを紹介している。

 

「今こそ必要なステップを踏み出すことができるのです。」というダグラス氏のアピールは、インドネシアのマーティ・ナタレガワ外相からも聞かれた。ナタレ ガワ外相は、「CTBT批准プロセスを、今始めることによって、核軍縮への貢献をできると信じている。」と語った。

 

ナタレガワ外相が始めてCTBT批准の意思を明らかにした2010年4月、トート事務局長は、「インドネシアが地域および世界において不拡散・軍縮のリーダーシップをとっていることを示している」と語った。

 

トート事務局長は、10年にも及ぶ政治的停滞を打ち破ってNPT運用検討会議が行動計画を採択しCTBTに強い支持を与えたことを歓迎した。

 

CTBTOは「昨年のハイライト」でこう書いている。「2010年におけるCTBTへの支持は国連においてもなされた。ロシア連邦と米国はCTBTの早期 発効の必要性を含め、二国間の戦略兵器削減に関する決議を初めて提出した。昨春米国が発表した『核態勢見直し』ではCTBTの重要性がうたわれた。」「9 月23日、第5回CTBT批准促進閣僚会議において各国外相が出した共同声明は、条約支持へのもうひとつの強力な政治的メッセージである。2月には、ユネ スコとCTBTOが、途上国における災害緩和と能力開発に関する協定を結んだ。」

 

 

また、11月に広島でノーベル平和賞受賞者らがCTBTへの支持を表明したことにも注目している。「彼らは、CTBTの発効に必要な残りの9ヶ国に対して、批准を呼びかけた」。

 

検証の問題

 

CTBTOは、検証措置について設定された基準に関して、CTBTの仕組みは妥協を許していない、と自信を持って述べている。「各施設において、きわめて高度なシステム能力とパフォーマンス、厳密な検証プロセスが求められている」。

 

「昨年のハイライト」によれば、2010年末の時点で「国際監視システム」(IMS)には264の施設がある。予定の337施設のうち、進捗率は80%ほ どである。ロシア国内だけでも昨年1年間で6つの施設が認証された。8月には、米国内にある気体監視施設が初めてIMSに統合された。

 

ウィーンのCTBTO準備委員会は、昨年1月、国際データセンター(IDC)が、リナックスへの移行など、5年に及ぶコンピューター更新計画を完了させたと発表した。新しい世界規模の通信インフラも出来て、データの利用確度や信頼性も向上した。

 

ひとつのハイライトは、昨年11月にCTBTOがヨルダンの死海近辺の施設において模擬的な現地査察を行ったことであろう。「20ヶ国から参加した35人の専門家が現地査察演習に参加した。現地査察は、条約が発効したならば、検証体制の重要な要素となる」。

 

また、CTBTOは加盟国の専門家養成にも力を入れており、各国・地域を対象にした一連の訓練ワークショップやセミナーを、ウィーン本部やオンラインで実施している。

 

「多くのコースを通じて、CTBTOが監視システムによって収集したデータへのアクセス・利用に関する技術的能力を加盟国に提供することができる。ウィー ンの本部には毎日10ギガバイトのデータが送られ、すべての加盟国が平等に利用できるようになっている」と「昨年のハイライト」は記している。

 

CTBTOの検証ネットワークには民生用の意義もある。2010年11月には、フランスが、津波警戒データの受領についてCTBTOと協定を結んだ8番目の国となった。

 

CTBTOによれば、「広範で最新のグローバル監視ネットワークと通信インフラの拡大・近代化・維持は、前例のない共同投資である。条約が1996年に署名開放されて以来、すでに10億ドルが検証体制構築のために投資された。」という。

 

CTBTOの2010年の年間予算は1億1557万9600ドル(8060万1500ユーロ)で、前年よりも伸びていない。スタッフ数も2003年以降変 化がない。「予算が変わらない中で増大する作業に耐えることは、きわめて大きな課題です。」と、トート事務局長は11月のCTBTO理事会定例会において 語った。

 

この点について、同理事会にEUを代表して出席したベルギーのフランク・ベッカー氏は、「12月時点において、加盟国の分担金支払い率は85%であった (昨年は79%)。すべての加盟国が、財政的義務を時間通りに無条件で完全に果たすことが肝要だ。」と語った。

 

2010年には、EUが、科学界(Scientific Community)との協力など、CTBTOの監視・検証能力を向上させるために、530万ユーロの追加貢献を行った。

 

トート事務局長は、11月13日、広島で開催されたノーベル平和賞受賞者会議で、「2010年、国際社会は、前進するとの決意を再確認しました。ハイレベ ルの会合や世界の指導者たちの意思表明が、新しい楽観主義的な感覚を与えました。またこれは、多国間主義は死んでいない、ということも表しています。共通 の課題に立ち向かう多国間での行動は、依然として可能であります。ますます複雑化する世界においては、おそらくそれが唯一の出口だと言えるでしょう。」と 語った。

 

同じくトート氏は、12月13日に国連総会でこう発言した。「CTBTは世界の軍縮・不拡散体制にとって非常に意義のあるものです。今日の安全保障環境に おいて、主要な役割を果たしています。CTBTが1996年に妥結するまで、2000回以上の核実験が行われてきたのですから。」「実験が行われるたびに 世界の安全保障は損なわれ、政治的信頼の溝を広げました。この10年間では核爆発実験はわずか2回行われただけです。しかし、今こそ具体的に行動すべき時 です。CTBTの発効は、今後30年間において、核不拡散体制を作るうえで唯一の決定的な要素になるかもしれないのです。」(01.04.2011)  IPS Japan/IDN-InDepthNews

 

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