│軍縮│米国議会勢力バランス変化で急がれる新START批准

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【ワシントンIPS=マシュー・バーガー】

昨春米国のバラク・オバマ大統領が、一連の核不拡散に向けた動きの総仕上げとして史上最大規模の首脳会議(47ヶ国が参加。内30ヶ国以上は元首による参加)となった「核安全保障サミット」を開催した際、多くの専門家はそれを契機に核兵器の廃棄が一層進展するのではないかと期待したものである。


しかしその後進展は見られていない。そして今、米中間選挙で共和党が勝利したことにより、新たな核兵器削減はもとより、米露政府が新戦略兵器削減条約(新START)で既に合意した削減分についても議会の承認が危ぶまれている。


STARTには、4月に米国が主催した核安全保障サミット直前に、オバマ大統領とロシアのメドベージェフ大統領がプラハで署名していた。以来、この条約は、各国の多くの著名な政府関係者や元外交官から称賛されてきたが、実際に条約の批准を決定する議会関係者の間では賛否相半ばする批評を受けてきた。


そして米国政府は、今や従来オバマ政権の最大の外交成果であり核不拡散に向けた極めて重要なステップとみなしてきた新STARTが、議会の承認を得られないかもしれない苦境に直面している。

一方新STARTはロシアでも批准プロセスの途中だが、議会(ドゥーマ)の外交委員会は、先週の米中間選挙における共和党の勝利を受けて、米上院での批准が進むかどうか疑問が出てきたことを理由に挙げて、批准勧告を取り下げた。

アジア歴訪中のヒラリー・クリントン国務長官は今週、上院はレームダック・セッション(中間選挙後から来年1月の新会期までの残りの会期)の間に、新STARTを批准する努力をすべきだと述べた。

上院のジョン・ケリー外交委員長も、10日、会期が終わる前に批准問題を取り上げたいし、そうなるだろうと述べた。

しかし多くの共和党議員はその考えに懐疑的である。

米議会の場合、条約批准には上院議員の3分の2にあたる67人の賛成を必要とする。中間選挙以前は上院100人中57人が民主党であったが、来年1月に新議員らによる新会期が始まると、53人にまで減少する。

START支持を表明した数人の大物共和党議員の支持をもってしても、レームダック・セッション終了後に議会の批准を勝ち取ることは相当困難になる見込みである。

しかし共和党の中でも保守派の議員が1991年に調印されたSATRT Iの後継条約となる新STARTに反対する動きを見せている一方で、穏健派議員の間では新STARTをさらに進めて次期STARTを求める動きを見せている。

外交関係評議会(CFR)のミカ・ゼンコー研究員は、新STARTを履行しても米露両国は依然としてお互いを数回全滅させられるだけの核兵器を保有することになると指摘している。

STARTは冷戦終結以来行ってきた備蓄核兵器の段階的な削減努力を継続するもので、米露両国が各々の弾道ミサイルに配備済の戦略核弾頭数の上限を2200から1500に削減することを規定している。そして削減期限は同条約が発効してから7年以内とされている。

また新STARTは、未配備分も含め、大陸間弾道ミサイルICBM、潜水艦発射弾道ミサイルSLBM 、核装備できる重爆撃機からなる運搬手段を800まで削減し、米露両国が相互の進捗状況を限定的に査察・モニタリングできると規定している。

ゼンコ―研究員は、さらなる削減が望ましいと主張している。同氏はCFRが9日に発表した報告書の中で、核攻撃と核兵器盗難のリスクを抑えつつ、信頼に足る核抑止力を維持しながら、一方で米国が将来において核弾頭数を削減・抑制するイニシアチブに対して国際的な政治的支持を獲得できる戦略的な核保有数として、戦術核を含めて1000発まで削減することが望ましいと語っている。

「米軍が、現在及び将来において想定されるあらゆる脅威を抑止し、核の先制攻撃に対して痛烈な報復を行える戦略核戦力の三本柱(ICBMSLBM、及び核爆弾が搭載可能な戦略爆撃機)を維持するには1000発の核弾頭で十分である。」とゼンコ―氏は記している。

しかし、ジョン・カイル上院議員(共和党)は、核弾頭数削減が核インフラと核兵器の近代化のための予算削減、さらにはそれに伴う関連労働者の雇用削減につながるのではないかと危惧している。

また共和党議員達は、ロシアが米国のミサイル防衛計画に懸念を持っているとの文言が新STARTに盛り込まれたことに懸念を表明している。彼らはミサイル防衛計画を米国の安全保障上なくてはならないものと考えているのに対して、オバマ政権と民主党議員の大半はそのように考えていない。


また彼らは、ロシアが条約を遵守しているかどうかを確認する検証システムの在り方について不十分であると懸念を表明している。

民主党は、共和党上院議員に対して、向こう10年間の核インフラ予算として既に800億ドルが約束されていることを改めて保証するとともに、検証システムは十分機能するものであると主張している。

一方、新STARTは一部共和党議員の反対をよそに、ロバート・ゲーツ国防長官が言うところの「米軍指導部の一致した支持」を享受しており、こうした軍部の堅い支持を背景に前述のゼンコ―研究員をはじめ、マデレーン・オルブライト元国務長官、イーゴリ・イワノフ元ロシア外相など様々な人々がSTARTプロセスをさらに進める上で最善と思われる提言を発表し始めている。(IPS/11.12.2010)

 

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