削減にも関わらず、依然として米安全保障戦略の中核を担う核兵器

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【国連IPS=ハイダー・リツヴィ、7月23日】

 

核兵器体系を維持・改修する米国の新計画は大量破壊兵器の拡散を防止する国際社会の努力に逆行する、と国連での核拡散・軍縮交渉を長年見続けてきた専門家らが警告している。 

 

 

国連での核問題交渉に数多く同席してきた核時代平和財団のデイビッド・クリーガー所長は、「米国が安全保障のために核兵器に依存し続けるかぎり、他国が同じ道をたどるのを妨げることはできない相談です。」と語った。

 

このクリーガー氏の発言の直前、ワシントンDCに本拠を置く全米科学者連盟(FAS)は、2020年末までに核兵器を40%削減するオバマ政権の計画を明記した非機密文書を先週発表した。

 

他の軍縮論者と同じく、クリーガー氏はこの削減計画を歓迎したものの、「核兵器廃絶にまで結びつくのかどうかはわからない。」と語った。国連加盟国の大多数、それに国連の潘基文事務総長もこの核廃絶という課題を真剣に追求しようとしている。

 

「核兵器を削減するあらゆる計画には意味があります。しかし私が見る限り、国防総省のこの計画には、切迫感と、核兵器ゼロに向けた行程計画が欠落しています。」とクリーガー氏は語った。

 

新計画では、既存の核兵器を相当程度削減するものの、2020年代末まで少なくとも3000~3500発の核兵器を保有し続けるとされている。現在、米国は5113発の核兵器を保有しており、そのうち2700発が作戦配備されている。

米国は核兵器数削減後も核兵器体系を維持・近代化し続けるだけではなく、そのために以前にも増して予算をつけるつもりである。

 

国家核安全保障局(NNSA)によれば、核体系維持の年間コストは2011年の70億ドルから、2017年には80億ドル、2030年には90億ドル以上になるとされている。

 

計画からわかることは、米国の核インフラは「活性化された実際に使えるスペアを維持し弾頭を保持すること」にあり、「かつての冷戦期の備蓄レベルに回帰したり、急激な増産を行う能力」を持つためのものではないということである。

 

これは、すべての核兵器国が核廃絶に向けて「重要なステップ」を踏むという核不拡散条約(NPT)上の義務を実行することに米国が真剣に目を向け始めたということを意味するのだろうか?

 

専門家らはこれに疑問を投げかけている。

 

「これは、核軍縮に向けて交渉するというNPT第6条の義務を『誠実に』果たすという国際法上の約束に反する行為です。」と核政策に関する法律家委員会(LCNP)のジョン・バローズ事務局長は語った。

 

オバマ政権が発表した「核態勢見直し」(NPR)では、「核兵器の役割と数を低減することで米国がNPT上の義務を果たしていることを示していく」とされている。しかし、法律家の中では疑いの目を向ける者もいる。

 

バローズ氏は、「それはよいことではあるが、そうした削減だけでは不十分だ」と指摘する。同氏はその根拠として、「厳密で効果的な国際管理の下での核軍縮に向けた交渉を妥結に導くよう、誠実に交渉する」ことをNPT第6条は加盟国に義務づけていると判示した国際司法裁判所の勧告的意見(1996年)を引用した。

 

国連総会でも勧告的意見を歓迎する決議が採択され、NPT上の義務を果たす手段として核兵器を世界的に禁止し削減する交渉を呼びかけている。潘事務総長も最近の声明の中で、この呼びかけを支持する発言を行っている。

 

バローズ氏の見方では、米国による一方的削減は別の道に踏み出すことであり、NPT上の義務によって促されたものである。しかし、「残念ながら、核態勢見直しではロシアの核戦力と大きな格差が生じないようにしつつ米国の核を削減すると書かれている」。

 

バローズ氏は、米国は、核兵器で核攻撃に反撃するというオプションを保持しつつ、数千発の核兵器を「自ら」削減することはできると考えている。

 

1964年、ロバート・マクナマラ国務長官は、米国の核はソ連に対する「確証破壊」を達成する規模のものであるべきだと提案し、「たとえば、ソ連の人口の25%(5500万人)と生産能力の3分の2以上を破壊すれば、国家としてのソ連の破壊を意味することになる」と論じていた。

 

マクナマラ氏は、この規模の破壊をもたらすためには、米国が当時保有していた核兵器で400発分あればよいと考えていた。もし米国が800発使えば、「殺される人口の割合を100%増やせる」と計算していた。

 

「マクナマラ氏の基準(全人口の25%の死亡)は、現在なら、ロシアに対しては核兵器51発で足りるでしょう。」と、プリンストン大学科学・地球安全保障プログラムのジア・ミアン氏はIPSの取材に応じて語った。ちなみに同氏が指摘した51発という数値は、天然資源保護評議会が2001年に行った試算によるものである。

 

またミアン氏は、「中国に対してであれば400発以下で同様の目的を達成することが可能だろう。」と語った。

 

一方クリーガー氏は、「『合理的な時限の中で核兵器をゼロにするという約束』は、『すべての核兵器の段階的、検証可能、不可逆的、透明な削減』に向けた核兵器禁止条約(NWC)という新条約の交渉を開始する際の前提条件になります。」と語った。

 

またクリーガー氏は、「この枠組みの中で、すべての国家が核兵器を廃絶するという目標に照らして、兵器削減〔の達成度〕が測られることになります。他方で、核兵器を維持・改修する巨額の予算の存在は間違った方向を指し示すものであり、『核兵器なき世界』を米国が真剣に目指しているのかどうか、他国の疑念は強まることになるだろう。」と語った。(07.23.2010

 

IPS Japan

 

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