Photo: UN Human Rights Council. Credit: UN Web TV
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『国連人権理事会』日韓両国の核政策への疑問が提示される

【ジュネーブIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

「バーゼル平和事務所」が、他の市民団体と協力して、国連人権理事会で日本及び韓国の核政策への異議を申し立てた。「市民的及び政治的権利に関する国際規約」第6条に定められた「生命への権利」を侵害しているという理由である。

人権諸条約の下での日本、韓国、その他12カ国の義務に関する「普遍的・定期的レビュー」(UPR)の一環として7月14日に提出された文書で、日韓両国の核政策への疑問が出された。

「米国や北大西洋条約機構(NATO)がロシアのウクライナ侵攻に介入してきたら核兵器を使用する」とロシアが威嚇する中で提出された今回の文書は、核抑止政策のリスクに対処する必要性を強調している。加えて、ロシアは、核兵器を保有し核戦争を開始するオプションを保有する唯一の国ではない。

「バーゼル平和事務所」のアラン・ウェア代表は、「核保有国やその同盟国を巻き込んだ緊張が強まる中、核兵器使用の計画や準備行為が核戦争のリスクを高めています。核戦争が起きれば人間社会に破滅がもたらされ、現在及び将来世代の権利への重大な侵害となるだろう。核兵器に関連して『生命への権利』に従うことは緊急の課題であり、人類全体の権利に影響を与えます」。と語った。

2018年、国連人権理事会は、核兵器の使用あるいは使用の威嚇は「生命への権利」と相いれず、市民権規約の締約国には核兵器の開発・取得・備蓄・使用を差し控えるべき義務が存在することを確認した。締約国はまた、既存の備蓄を廃棄し、グローバルな核軍縮達成に向けた交渉を誠実に進める義務があるとされた。

しかし、日韓両国は、武力紛争下において米国が両国に代わって核兵器を使用あるいは使用の威嚇を行うことを要素とした拡大核抑止政策を採っている。両国はまた、米国が先制不使用政策の採用を検討していた時ですら、核の先制使用オプションを支持していた。

「バーゼル平和事務所」などの市民団体は、日韓両国の拡大核抑止政策や、包括的でグローバルな核軍縮交渉を支持しない姿勢は人権擁護の義務に反していると主張している。

同事務所の提出した文書は、「生命への権利」実現のために両国が採りうる政策について勧告を行っている。例えば、核先制不使用政策の採択や、安全保障ドクトリンにおける核兵器の役割低減のための措置などが挙げられている。

また、北東アジア非核兵器地帯の確立や、核不拡散条約(NPT)75周年にあたる2045年をめざして核兵器を世界的に廃絶するよう、現在ニューヨークの国連本部で開催されている第10回NPT再検討会議に提案することもできる。

提案された文書は単に日韓両国を批判しているだけではなく、これまでに取られた前向きな措置についても評価してもいる。とりわけ、韓国は(2018年冬季五輪における平和の取り組みなどの)スポーツ外交を繰り広げたし、朝鮮半島の平和・非核化プロセスに向けて北朝鮮と対話と合意を再開する外交努力も行っている。

提出文書にある疑義や勧告を国連人権理事会が取り上げ、日韓両国に提示するようなことがあれば、両国にはそれに対応する義務が生じる。

過去2年間、国連人権理事会やその他の国連人権機関に対して、同じような文書がロシア・米国・フランス・カナダ・デンマーク・アイスランド・北朝鮮・オランダ・英国に関しても提出されている。

これまでのところ、文書にある問題を取り上げた機関はないが、現在のレビューサイクルにおいて、ウクライナ紛争から生じた核戦争の脅威の増大が、より真剣に取り上げるべき問題として核問題への認識を人権理事会で刺激することになるかもしれないと期待されている。(07.31.2022) INPS Japan/ IDN-InDepth News